探蝶逍遥記

ハヤシミドリシジミの飼育記録

 昨年11月に富士山麓のポイントでカシワの一年枝に付いていたFavonius属の越冬卵を撮影(外部リンク、自宅に持ち帰り飼育をしてみました。越冬卵は原則現地で自然状態のまま撮影することにしておりますが、ハヤシかオオミドリかの区別が越冬卵微構造確認では判断付きかねるため、仕方なく飼育・羽化させて判定するのが目的でした。先ずは越冬卵の微構造です(再掲載)。

++横位置画像をクリックすると拡大画像を見ることができます++
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D7K-85VR-24R(トリミング+深度合成処理:上段5コマ、下段6コマ)、ISO=200、F29-1/160、-1.0EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影月日:2012年11月中旬

 冬場は定石通り冷蔵庫に保管しました。飼育は産まれていたカシワではなく、クヌギの花穂を前提に、近所のクヌギ芽吹き状況をウオッチしておりました。昨年クロミドリ(外部リンクアイノミドリ(外部リンク)を飼育した際、クヌギの芽吹きは4月10日頃でした。ところが本年は3月に入って異常に気温が高かったせいか、3月中旬過ぎには既に芽吹きが始まっていたので、3月20日に冷蔵庫から越冬卵を取り出し、室温保管に切り替えました。クロミの場合は冷蔵庫から出して2日後、アイノは4日後に孵化したので、今回も1週間以内に孵化するだろうと推測しておりました。ところが10日経過しても精孔部の孔開きが認められません。無精卵か死卵だったかとちょっと心配になりましたが、3月31日になってようやく孔が開きました。
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D71K-85VR-24R(トリミング+2コマ深度合成処理)、ISO=200、F29-1/320、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影月日:3月31日

 孔は徐々に拡大し、4月2日に孵化しました。孵化直後の初齢幼虫です。
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D71K-1855@52mm(トリミング+2コマ深度合成処理)、ISO=100、F13-1/400、-0.3EV、外部ストロボ+スレーブ2灯、撮影月日:4月2日

 体長は1.5mm程度。クヌギの花穂へはそれほど迷わず食いついてくれてホッと一安心。実は初齢に与える餌はクヌギ等の新芽でも構わないのですが、クロミやアイノ飼育の経験から、新芽内に潜入されると初齢~2齢に至る過程の観察が困難になると思い、最初から花穂を与えたのでした。この作戦は大成功で、初齢眠から2齢に至る過程が正確に把握できました。クヌギ花穂に食いついている初齢幼虫です。
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D71K-1855@46mm(トリミング+上段3コマ/下段2コマ深度合成処理)、ISO=100、F13-1/400、-1.0EV、外部ストロボ+スレーブ2灯、撮影月日:4月7日

 画面左に頭部があり、体長は約2.3mm。背面の台形模様もはっきりとしてきました。体色はクヌギの花穂にそっくりです。4月8日に眠に入り、10日に2齢になりました。
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D71K-1855@35mm(トリミング+2コマ深度合成処理)、ISO=100、F11-1/250、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ2灯、撮影月日:4月13日

 体長は6mm弱。体型が扁平化してきましたが、体色にさほど変化はありません。4月14日に眠に入りました。面白いのは眠の際、花穂から離れ、湿らしたティッシュペーパー上に移動して静止する行動です。
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GXR@5.1mm、ISO=200、F7.2-1/25、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影月日:4月15日

 自然状態では枝の分岐とかに静止して眠状態を過ごすのでしょう。この生態は終齢(4齢)まで同じでした。4月16日に3齢になりました(左が頭部)。
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D71K-85VR(トリミング+3コマ深度合成処理)、ISO=200、F13-1/200、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日:4月19日

 体長は10mm弱。3齢で体色にかなり変化が出てきます。全体に黒味を帯び、相対的に背面の楔型模様がくっきりと目立ってきます。第6腹節のそれは特に白く目立ちます。更に側面の白線も明確になります。4月21日に眠に入り、24日に4齢(終齢)になりました。
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D71K-85VR(トリミング+上段5コマ/下段3コマ深度合成処理)、ISO=100、F13-1/200、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日:4月28日

 体色が更に暗化し、見た目真っ黒です。教科書(※)によれば、ハヤシの終齢幼虫の体色はバリエーションに富んでいて灰色から暗褐色まで確認されているようです。管理人の飼育個体は恐らく一番黒いタイプだったのでしょう。
※福田晴夫他、原色日本蝶類生態図鑑(Ⅲ)、p.171(保育社)
 4齢の斑紋を検して、ようやく飼育個体がオオミドリではなく、ハヤシであること確認でき、胸をなで下ろしました。オオミドリはもう少し体色が青味を帯び、第8腹節が横方向に拡がる等の特徴があるとされています。この絵では体長17mmほどですが、最終的には20mm程度まで成長し非常に巨大な印象を受けました。なお、終齢の途中で冷蔵庫保管してきたクヌギの花穂も在庫が尽きたため、最後はクヌギの若葉に切り替えました。その若葉の食痕です。
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D71K-85VR、ISO=200、F11-1/100、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日:5月3日

 先端から食って中脈は残し気味、葉の1/2~1/3程度食して隣の葉を食うパターン。結果、矢尻型の食痕が残されます。孵化から31日目の5月3日、前蛹となりました(左が頭部)。
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D71K-85VR(トリミング+上段3コマ/下段4コマ深度合成処理)、ISO=200、F11-1/100、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日:5月3日

 他のシジミ同様、淡い部分がピンク色を帯びています。面白いのは画面右端に写っている液体。アゲハの終齢幼虫が蛹化前に黒い液体を出すことを経験しておりますが、シジミ幼虫でもこのような体液(アゲハと異なり透明)を腹部から出すことを初めて知りました。5月5日、無事蛹化しました。
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D71K-85VR(トリミング+上段3コマ/下段2コマ深度合成処理)、ISO=100、F11-1/250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日:5月7日

 体色は褐色、全体に小黒点が散布されていて特別特徴のある姿ではありません。5月21日あたりから翅面が黒化し、羽化の接近を知らせてくれました。
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D71K-85VR(トリミング)、ISO=100、F11-1/100、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日:5月23日

 翅面が紫色を帯びたブルーに輝き、♂が羽化することを確信いたしました。そして孵化後51日目の5月23日、予想通り♂が無事羽化いたしました(蛹期は18日)。
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D71K-85VR、ISO=100、F11-1/100、-1.0EV、外部ストロボ、撮影月日:5月23日

 カシワがないので、クヌギに何とか止まらせての記念撮影。この後、野外に移動し「飛び去るなよ~」って願掛けしながら(笑)、記念撮影。先ずは真正面からお見合い写真。
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D71K-85VR、ISO=400、F6.3-1/500、-1.0EV、撮影月日:5月23日

 実はLEDライトを照射して開翅を目論んだのですが、言うことを聞いてくれませんでした(^^; 仕方なく真正面から垣間見えるウルトラマリンの輝きをちょっぴり写し込むことに。続いて真横から。
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D71K-85VR、ISO=400、F6.3-1/500、-1.0EV、撮影月日:5月23日

 ここに至るまでの過程で結構ビュンビュン羽ばたきをして暴れていたので、縁毛もちょっぴり痛んでしまいました。僅か1個の越冬卵からの飼育は非常にリスクが高いのですが、昨年のクロミドリ、アイノに引き続きハヤシの飼育に成功し、暫し達成感を楽しんだのでした。実はハヤシの飼育は中学生以来、ん十年振りなのです。当時は神奈川県に細々と残るカシワ林から今回同様僅か1卵採卵し、何とか♀を羽化させました。その時の展翅標本は奇跡的に未だ保管できていて、いずれ標本画像をご紹介したいと思います。当時、ゼフの飼育は「これで最初で最後だろう」と思っておりましたが、いいおっさんになってから再度飼育するとは夢にも思わなかったのです。結果、前回は♀、今回は♂で「一姫二太郎(?)」と飼育仕分けが出来たのもラッキーでした(^^)
by fanseab | 2013-06-11 20:27 | | Comments(0)
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