探蝶逍遥記

ボルネオ・グヌンムル公園遠征記(21)ビワハゴロモと出会う

 以前、プロ昆虫写真家の海野さんが小諸日記でグヌンムルへ取材旅行された際の画像(外部リンク)を公開されております。この中で一番インパクトを受けたのがビワハゴロモでした。素晴らしくも珍奇なこの昆虫が簡単に観察できるのか?半信半疑でしたが、蝶の探索がてらビワハゴロモも丹念に探してみました。その結果、思いもかけず成果が出ましたので蝶以外の昆虫関係で真っ先にご紹介することにいたしましょう。今回ご紹介するハゴロモ類の同定は後述するサイトを参考に実施しましたが、当然誤りがあるものと思われます。その点はご承知おき下さい。最初に登場するのは最も有名と思われるテングビワハゴロモ(Pyrops intricata)。   
                                                                                ++横位置画像をクリックすると画像閲覧ページに飛び、拡大画像を見ることができます++
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D90-85VR、ISO=400、F13-1/200、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影年月日・時刻:2012年3月12日、9時48分
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GXR@5.1mm、ISO=200、F3.6-1/25、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影年月日・時刻:2012年3月12日、9時41分

 遊歩道脇の樹肌上で発見しました。想像していた以上にデカくてビックリ。実は標本を見た機会もなく、ついつい日本国内に棲むアオバハゴロモ(Geisha distinctissima)を少し大きくした程度かと思っておりました。それがとんでもない、ヒグラシ位のサイズに驚きました。脅かすとサッと飛び立ち、後翅の鮮やかなブルーを見せびらかせながら、ジャングルの奥に消えていきます。パスト連射等での飛翔画像は残念ながら撮影できませんでした。なお、赤鼻の「天狗」で前翅地色が緑色、その翅に黄色斑点を配する種類は5種類程度記載されていますが、テングビワハゴロモの和名が本来、Pyrops属のどの種に該当するのか?かなり曖昧な取扱いがされているような気がします。お次は赤鼻「天狗」で翅が粉を吹いたようなビワハゴロモ(P.sultana)。
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D7K-34、ISO=200、F4-1/80、-0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2012年3月10日、11時02分
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D5K-10.5-X1.4TC(トリミング)、ISO=640、F11-1/80、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2012年3月10日、11時05分

 その風貌から「コフキテングビワハゴロモ」と勝手に和名をつけて楽しんでおりました。この子は樹肌の色と顕著に異なるため、比較的発見は容易でした。お次は棍棒状の鼻を持つコンボウビワハゴロモ(Zanna nobilis)。
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D90-85VR、ISO=200、F13-1/80、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影年月日・時刻:2012年3月12日、14時49分
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D7K-10.5-X1.4TC、ISO=200、F14-1/50、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2012年3月10日、14時45分

 この子は派手さはないものの、微妙な突起を有する「棍棒」、そして翅に刻まれた黄色斑点の質感がとても見事でお気に入りとなりました。3番目に登場するのは「天狗の鼻」を持たないハゴロモの一種(Penthicodes farinosa)。
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D7K-85VR、ISO=200、F11-1/80、-0.3EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影年月日・時刻:2012年3月11日、6時51分
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D7K-34、ISO=640、F13-1/100、-0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2012年3月11日、7時04分

 この子は宿泊したロッジから僅か数10mの樹木に静止しておりました。驚かすとツッツッと樹冠の方に速足で逃げていきます。11日の朝方発見し、翌朝再度この樹を訪ねてみると、やはり2頭が付いておりました。どうやらこのハゴロモが大好きな「ご神木」だったようです。最後は同じく鼻が伸びないタイプのハゴロモの一種(Scamandra fasciata)。
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D90-85VR、ISO=400、F10-1/125、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影年月日・時刻:2012年3月11日、19時59分
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D90-85VR、ISO=400、F10-1/125、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影年月日・時刻:2012年3月11日、20時00分

 本種は↑でご紹介したfarinosaから僅か15mの近くに潜んでいました。前翅の基部側から中央部にかけて伸びる鮮やかな緑色の配色が素晴らしい種類です。その緑色の絨毯の上には渦を巻いた黄色の模様が散布されています。管理人はこのデザインから正倉院御物として保管されている絵画の唐草模様を連想しました。ですので、本種は個人的に「テンジクハゴロモ」の和名をつけたい所です。
 ここまでご紹介した5種の中でsultanaを除き、翅や体の配色はハゴロモが付いている樹肌に擬態しているように思います。特に見事だと思ったのがnobilisfarinosaでした。farinosaはとりわけ樹肌に溶け込んでおり、地衣類や樹肌の色や風合を完璧に模倣しているように思われました。

<ハゴロモ類の同定に役立つサイト> 
 今回色々とネット上を探索したのですが、同定の手助けになるサイトは容易に見出せませんでした。何とか仏・ソルボンヌ大がアップしているビワハゴロモ科(Fulgoridae)を専門に扱うタクサのレビューサイト(外部リンクで見当をつけました。因みに同サイトによればPyrops属としてこれまで56種、Zanna属38種、Scamandra属32種、Penthicodes属14種が記載されております。一方で、このサイトは画像が未整備状態なので、補助的に「Encyclopedia of Life」なるサイトを参考(外部リンクにしました。

 この仲間は本当に魅力的な種群が多く、蝶の撮影を放棄してビワハゴロモ屋に転向しようかと本気で思うほど、惹かれるものがあります。今回の遠征で、ハゴロモが付いていそうな「ご神木(樹相)」の目安がついたので、今後、機会があれば各地で彼らの画像採集に精進したいと思います。
<次回へ続く>
by fanseab | 2013-03-13 21:07 | その他の昆虫類 | Comments(12)
Commented by nomusan at 2013-03-13 21:48 x
う~む・・・・・
と唸ったあとの言葉が出てこない・・・ですねぇ・・・(笑)。
しかも・・・でかいんですよねぇ・・・。
いやはや・・・なんとも・・・・
Commented by spatica at 2013-03-13 23:05 x
これは素晴らしい成果ですね。
一度に5種類も見つけられるなんて素晴らしいです。
私も遠征時には毎回気にしている仲間ですが、あまり出会えていません。

チョウの記事にコメントしてないのにすみません(^^;)
Commented at 2013-03-14 16:52
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by fanseab at 2013-03-14 22:07 x
nomusan、この昆虫はあれこれ説明するより、百聞は一見にしかず・・・の世界です。発見した時の喜びは珍蝶に出会った時以上ですね。なにせ、図鑑類が乏しいので、全てが初見であり、驚きの連続なのです。
Commented by fanseab at 2013-03-14 22:10 x
spaticaさん、5種類共に整備された遊歩道の脇で見つけ、撮影できております。それだけグヌンムルの昆虫相は豊かであると言えましょう。普段は雑昆虫に目を向けない小生ですが、すっかり虜になってしまいました。貴殿のライティングを見習って、もう少し綺麗な画像をゲットできるよう、精進したいと思います。
Commented by fanseab at 2013-03-14 22:11 x
鍵コメさん、沢山練習に励んで良き成果が出ることを期待します。
Commented by khaoyai_m2 at 2013-03-15 20:54
こんにちは!
5種類は凄いです。
みな、薄暗そうな雰囲気ですが、そんな場所でしょうか?
僕の見つけたものは、ジャングルの縁の日が差さないけど、
外側に向いたところです。
Commented by fanseab at 2013-03-15 22:20 x
カオヤイさん、小生にとって彼らは初物で、ビギナーズラックだったかもしれません。生息環境はご指摘のように薄暗いですが、いずれも遊歩道の脇で風通しは比較的良好・・・。そんな雰囲気の場所です。5種の中ではsultanaが最も陰気な場所にいたような気がします。
Commented by 22wn3288 at 2013-03-16 08:22 x
ハゴロモの仲間は凄いですね。
びっくりの映像が並んでいますね。
流石熱帯。
珍しい昆虫を見せて頂き、保養になりました。
Commented by fanseab at 2013-03-16 22:41 x
22wn3288さん、ハゴロモの仲間は奇想天外な形や色合いが素晴らしいです。ツノゼミももっと珍奇な形態が多そうなので、別の機会に探したいと思います。熱帯アジアの生物の多様性を実感できますね。
Commented by naoggio at 2013-03-18 14:37 x
遅いコメで恐縮です。
素晴らしい成果ですね。さすがです。
それぞれ個性溢れる色と柄、多様性に富んだ昆虫の世界の中でも相当な変わり種ですね。そしてきれいです。
最後の種の翅先の網目模様が繊細で凄いです。
以前本(日高さんの本だったかな)でユカタンビワハゴロモについて書かれた部分があったのを思い出しました。
擬態についての事だったのですが、ユカタンビワハゴロモは要するに「何だかわからないもの」に擬態しているのだ、と書いてありました(笑)。
Commented by fanseab at 2013-03-18 21:06 x
naoggioさん、コメント有難うございます。
これまで海外遠征では蝶以外の昆虫に目を向けることは少なかったのですが、ハゴロモは別格の魅力があって、拘って写してみました。翅脈はいずれの種類でも繊細ですね。ユカタン・・・も是非見てみたい種です。とにかく異様な形態を纏って敵(鳥など)に警戒心を抱かせる作戦なのでしょうね。
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