探蝶逍遥記

Hestina属2種の第4化(2012年晩秋~初冬)

 管理人の住んでいる神奈川県・川崎市内ではゴマダラチョウ・アカボシゴマダラ共に基本、年3化とされています。ところが、両種共に11月以降に数は少ないものの羽化する個体が確認されており、これを第4化と見るのが自然な考え方だと思います。拙宅庭にある高さ3m程のエノキでの継続観察によれば、ゴマダラチョウの最遅羽化記録は2000年12月9日で、この観察結果を専門誌に投稿した経緯があります。一方、アカボシの場合は2010年12月2日が最遅羽化記録です(拙ブログ参照)。

 例年3化個体♀が10月頃産んだ卵はその後、3パターンの経過を辿ります。つまり、①ゆっくりと成長して短角型に脱皮し、11月末頃地表に降り、越冬個体となる。②11月頃までに蛹化し、第4化個体として11月末~12月にかけて発生、③比較的早く成長し、長角型で樹上もしくは落葉下で越冬個体となる。今回の観察対象は②に相当します。

 先ずはゴマダラチョウ。そもそも拙宅エノキにゴマダラが産卵するのは数年に一回程度で大変稀です。昨年11月にエノキを覗くと、アカボシの幼虫が数頭付いておりました。例年より数が少ないかなと思いながら、よくよく観察すると、1頭は明らかにゴマダラの終齢幼虫でした。その後前蛹になりました。

 ++横位置画像はクリックで拡大されます++
f0090680_2215818.jpg
D7K-24、ISO=400、F13-1/80、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影年月日:2012年11月5日

 11月8日頃蛹化した後、エノキの葉が黄ばむ12月に入ると、葉に吐糸した糸が解けて、12月8日には尾鉤が葉から離れる事態になりました。
f0090680_2221839.jpg
GXR@5.1mm、ISO=200、F6.5-1/45、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影年月日:2012年12月8日

 このままでは地上に落下するのも時間の問題だったので、仕方なく回収し、室内に保管して経過を観察することにしました。12月11日になって、翅面が色づき始め、翌12日に羽化間近を思わせる状況になりました。
f0090680_2223741.jpg
D7K-85VR(トリミング)、ISO=200、F11-1/200、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影年月日・時刻:2012年12月12日、22時31分

 腹節が緩む羽化間近のサイン(矢印)が出てきたので、カメラを準備して臨戦態勢で臨みました。この頃、蛹は5分~15分おきにブルッブルッっと体を震わせ、その度に腹節の緩みが大きくなってきました。恐らく蛹殻と成虫の体を分離する作業に入っていたものと推定されます。そしてついに、23時27分過ぎ、頭殻が破れ、羽化が始まりました!
f0090680_2225798.jpg
D7K-85VR(トリミング)、ISO=200、F11-1/200、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影年月日・時刻:2012年12月12日、23時27分50秒

 その後の経緯を6枚組写真でまとめてみました。
f0090680_223672.jpg
D7K-85VR(トリミング+画像合成処理)、ISO=200、F11-1/200、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影年月日・時刻:2012年12月12日、23時29分26秒~52分56秒。
 
 頭殻が破れてから翅が完全に伸びきるまで僅か25分間。油断してちょっと席を外していたら羽化の瞬間を見届けることはできませんでした。因みに管理人は屋内外を通じてゴマダラの羽化瞬間の撮影はこれが初体験で嬉しい限り。羽化個体は♀でご覧のように裏面はほぼ純白。春型、それも青森県等寒冷地で羽化する個体の裏面の白さに匹敵します。翌日、羽化した個体の開翅画像も撮りました。
f0090680_2233132.jpg
D7K-85VR、ISO=200、F14-1/200、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日:2012年12月13日

 表翅はさほど白化の兆候はありません。2000年12月に羽化した♀と比較すると、後翅第5・6室外縁側の白化はさほど顕著ではないようです。もちろんこの時期、屋外に出してあげても殆ど活動できない様子でしたが、いつの間にか飛び去っていったようです。当然、伴侶を見つけることはできないので、可哀想な末路を辿ったことでしょう。

 一方、アカボシゴマダラですが、昨年晩秋は例年と比較して観察できる幼虫の個体数が少ないように感じられました。拙宅庭で晩秋に蛹化した蛹2個体も、11月29日および12月17日に野鳥の食害で消滅しました。この時期はとにかく野鳥の被害で羽化できない個体が目立ちます。結局、管理人が昨年最遅羽化記録として観察したのは自宅近くで11月16・17日両日に羽化した♀♂各1個体でした。♀は恐らく11月16日の夕刻~夜に羽化したものと思われます。魚露目で羽化環境を描写してみました。最初は♂。
f0090680_2235213.jpg
D90-1855VR-gy8(トリミング)、ISO=400、F29-1/60、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影年月日・時刻:2012年11月17日、9時08分。

 このアングルからは見えませんが、右前翅は羽化不全状態でした。次に開翅を撮りました。
f0090680_224250.jpg
D90-1855VR-gy8(トリミング)、ISO=400、F29-1/60、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影年月日・時刻:2012年11月17日、9時13分。

 翅裏、表翅共に斑紋特徴は夏型そのもので、外来種アカボシ春型の特徴である「白い」状態ではありません。過去に観察したアカボシ第4化個体♂はいずれも夏型と大差ない斑紋でした。お次は♀。
f0090680_2241859.jpg
D90-1855VR-gy8(トリミング)、ISO=400、F29-1/60、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影年月日・時刻:2012年11月17日、9時13分。

 右下に羽化殻が見えています。因みに♂も同じエノキの実生から蛹化しております。こちらは裏面第5・6室の白班がかなり外縁側に伸びたような状況で夏型に比較すると僅かに白化が認められます。概ねアカボシ第4化♀はこのような特徴を認めることができると思います。

 ↑でご紹介した♂は夏場だったら、すぐお隣で羽化した♀に猛アタックをかけていたでしょうが、寒空の下、そんな元気もなくひたすら寒さに耐えていたように思います。ゴマダラ・アカボシ共に第4化羽化個体には「寒さ」という厳しい現実が待っているのです。
by fanseab | 2013-01-10 22:05 | | Comments(8)
Commented by 22wn3288 at 2013-01-11 08:48 x
ゴマダラチョウの幼虫から前蛹、蛹、羽化まで確実に観察、撮影されていて素晴らしいですね。
成長の過程を良く見ることが出来ました。
Commented by ainomidori443zeph at 2013-01-11 17:40
まさしく春型個体ですね。蛹の時期の低温の影響でしょうか?12月までよく生き延びていましたね。
Commented at 2013-01-11 22:01
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by fanseab at 2013-01-11 22:02 x
22wn3288さん、この手の継続観察は成虫が沢山飛んでいるハイシーズンにはなかなか手が回らず、無理なことが多いですね。成虫が飛ばなくなった晩秋だったので、じっくりと撮影もできました。それでも羽化の過程を連続撮影するのには運と少しばかりの辛抱が必要ですね。
Commented by fanseab at 2013-01-11 22:09 x
愛野緑さん、この時期に羽化した♀2個体共にほぼ同じような個体が出現しました。春型と言っても関東地方で観察される♀個体よりも少し白化が進んでいるような気がしました。白化因子はどうでしょうか?蛹の時期の低温だけが影響しているようにも思えません。仰る通り、この時期はアカボシ同様、上手く蛹化まで到達しても野鳥の食害に合うことが多く、地表に落下したまま放置しておけば、恐らく野鳥の餌食になっていたことでしょう。そもそも蛹化した時点ではエノキの葉が枯れることは想定していない訳なんで、この時期に羽化まで至ることが珍しいことは確かです。
Commented by fanseab at 2013-01-11 22:20 x
鍵コメさん、この時期に羽化した個体は寒さで元気に飛び回れないため、人目につかないことが多いのだと思います。エノキのひこばえ(実生)を見て回り、時期外れの蛹がいるかどうか確認するのも、晩秋の楽しみの一つになるかもしれません。
Commented by maeda at 2013-01-20 17:37 x
ゴマダラもアカボシも春型の特徴を持っている個体ですね。興味深いです。ヤマトシジミの♀が秋と春で共通したブルーを持つのと同じ感じですね。
Commented by fanseab at 2013-01-20 22:00 x
maedaさん、仰る通り、春型が白くなる特徴は共通していますが、第4化個体の白化は両種で微妙に異なるようです。晩秋~初冬の寒冷気候が第4化個体の白化に与える影響については、もう少し整理して考える必要がありますね。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード