探蝶逍遥記

ボルネオ・グヌンムル公園遠征記(2)アカエリトリバネアゲハ

 科別紹介はアゲハチョウ科から。トップバッターで登場するはアカエリトリバネアゲハ(Trogonoptera brookiana brookiana)です。このアゲハについては2002年のダナムバレー遠征で唯1頭の♂に出会い、昂奮しながら死にもの狂いで撮影した記憶が蘇ってきます。当時は銀塩での撮影でフィルム数の制約があっただけに、後から振り返ると色々と不満の残るものでした。そして2回目のキナバル遠征。リベンジするつもりが、渓谷の遥か上空を滑空するアカエリをただただ見上げるだけで撮影できず茫然としたのでした。そんな経緯もあって、今回の遠征の主目的を「アカエリをデジタルで撮り直す」ことにいたしました。
 現地に着き、滞在日数を経る毎にグヌンムルではアカエリは普通に飛んでいて、極端に言えば、アカエリ以外のアゲハチョウを探す方がむしろ難しいことに気が付きました。そうは言っても、彼らの個体数が多いポイントは限られていて、そこを見出すのに結構時間がかかったことも事実です。一番確実に観察できたのは、コンクリート舗装された遊歩道の上でした。コンクリートから滲み出すミネラルを求めてアゲハチョウ♂が集うのは日本国内でも全く同じ光景です。最初はその吸水広角画像です。                                                                                        ++横位置画像はクリックで拡大されます++
f0090680_2254863.jpg
D7K-10.5-X1.4TC(トリミング)、ISO=200、F11-1/250、-0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2012年3月11日、11時38分

 彼らは相当に敏感でこれ以上接近すると飛び散ってしまいます。ダナムバレーでは魚眼で目と鼻の先まで接近できたのに、今回はとてもそこまでの接近戦は不可能でした。おまけにここは遊歩道。結構な頻度で観光客が通過し、その度に折角集まった集団がバラケて辛い思いをしました。この地域は珊瑚礁が隆起して生成された石灰岩山塊。本来ミネラル豊富な場所なので、公園のどこかには必ず人工的な風景以外の集団形成スポットがあるはずです。しかし、今回の滞在では残念ながら発見できず、上記のような場所で我慢するしかありませんでした。最大の集団でも10頭程度で、概ね午前10時から昼頃までが吸水のピーク時間と思われました。翅を拡げた吸水場面はやはり望遠で狙うのが楽ですが、かなり暗い環境下なので、本当に露出には苦労させられました。
f0090680_22542686.jpg
D7K-34、ISO=1250、F10-1/640、-1.0EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2012年3月13日、10時55分

 この絵も出来栄え自己評価は100点満点で60点程度。この日に備えて2年間国内でアゲハ撮影に注力してきたのに、その成果が出ず落胆です。やはり国内のPapilioとは異なる翅形が最大の難点で、複眼以外に合焦すべきポイントを絞り難い厳しさを痛感しました。まぁ、それでも暗闇にギラッと光る金緑色の輝きを眺めていると苦労を忘れてしまいます。吸水は一箇所に留まらず、神経質に飛び回っていくので、無茶苦茶シャッターを押していると、飛翔シーンが撮れてしまいます。
f0090680_2255757.jpg
D90-85VR(トリミング)、ISO=400、F8-1/125、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2012年3月11日、11時33分

 胴体の太さはTroides属を含め、この仲間の特徴ですね。明るい場所での吸水は一度だけチャンスがありました。
f0090680_22552527.jpg
D7K-34、ISO=200、F6.3-1/1000、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2012年3月11日、11時57分

 逆光でかつ背景が白を基調とした難しい設定条件。もう少し強くストロボを焚くべきでした。吸水を終えるとよく彼らは葉上で全開休止しております。
f0090680_22553977.jpg
D90-85VR、ISO=200、F6.3-1/500、-0.7EV、撮影年月日・時刻:2012年3月11日、10時43分

 腰の高さ程度だと彼らの存在を見落とすことが多く、急に飛ばれてビックリすることが多々ありました。考えてみると、黒と緑を基調とした翅表の斑紋はジャングルの中に見事に溶け込んで姿を隠すのには最適なのですね。銀塩時代には満足に撮れなかった飛翔は今回特に注力いたしました。お蔭様で広角飛翔については満足すべき成果が得られました。最初はやや離れた位置を飛ぶ個体。
f0090680_2256747.jpg
D7K-10.5-X1.4TC(トリミング)、ISO=800、F7.1-1/320、-1.0EV、撮影年月日・時刻:2012年3月11日、10時24分

 アカエリの前方の葉は多分ショウガ科の草本でしょう。お次はほぼ対角魚眼レンズの目の前で捉えた画像。
f0090680_22562267.jpg
D7K-10.5-X1.4TC(トリミング)、ISO=800、F7.1-1/200、-0.3EV、撮影年月日・時刻:2012年3月11日、10時27分

 3枚目は「画面端個体ジャスピンの法則」に従った画像。左端にかろうじて入った個体を縦トリミングでまとめたもの。
f0090680_22563634.jpg
D7K-10.5-X1.4TC(トリミング)、ISO=400、F10-1/400、-0.7EV、撮影年月日・時刻:2012年3月11日、10時33分

 アカエリの飛翔画像ではカメラを水平にパンニングした場合、殆ど翅裏を見せたものに終始し、翅表が写る確率が低いです。↑の絵は唯一の例外で、やや見下ろすアングルで撮れたので、奇跡的に翅表全面が写りました。画面端はともかく、この翅表のギラギラする金緑色はほぼ見た目通りで、色再現性には満足しております。最後は奇跡的にノートリで画面ほぼ中央に収まったので、大き目の画像でのご紹介です。この画像は特にクリックで拡大してご覧頂くと迫力があると思います。
f0090680_2257234.jpg
D7K-10.5-X1.4TC(ノートリ)、ISO=400、F8-1/250、-0.7EV、撮影年月日・時刻:2012年3月11日、10時37分

 暗いジャングル内を滑空する雰囲気が良く出ていて今回遠征では一番お気に入りの画像になりました。次回もアゲハチョウ科をご紹介します。
by fanseab | 2012-12-14 22:59 | | Comments(14)
Commented by ごま at 2012-12-14 23:42 x
いきなり凄いのが出ましたね。
憧れのチョウです。
こんなのが出てきたら....何が何だか判らなくなりそうです。
飛翔写真がとにかく素晴らしいですね。
Commented by 6422j-nozomu2 at 2012-12-15 00:07
お見事、飛翔写真。ボルネオに永住したいです。凄い枚数を撮影された予感が。歩留まりエエですね。流石腕前の良さ。
Commented by 22wn3288 at 2012-12-15 08:37 x
見事な写真が並ん゛いて圧倒されました。
私も憧れのチョウです。
このような場面を是非見てみたいと思います。
飛翔も素晴らしい。
Commented by banyan10 at 2012-12-15 18:47
見事な飛翔ですね。
小諸日記にも何度も登場していますが、吸水が中心で、飛翔はパスト連写だった気がします。
広角の吸水よりも価値のある飛翔ではないでしょうか。
Commented by naoggio at 2012-12-16 07:24 x
いや〜、すばらしいです。
面倒な乗り継ぎを経て行かれた甲斐がありましたね。
それにしても生きているアカエリはすごいオーラを放ってますね。
アカエリ属について初めて知ったのは中学時代、朝日新聞の記事でパラワンアカエリの写真を見た時でした。
それ以来是非飛んでいる所を見てみたいものだと思っていましたが夢を果たせずにいます。
見に行ってみたいな〜。羨ましいです。
Commented by OTTO at 2012-12-16 10:17 x
ちょっとブログ点検見回りの(笑)お留守をしていた間に、今度はボルネオ撮影記が始まりましたね。
今後の連載がまたまた楽しみです。

で、はやくも大物・美麗種アカエリトリバネの登場。
はぁ~・・・見事な飛翔写真にため息が出ます。
シャープな鋭角の長い前翅や、首周りから胴体の鮮やかな赤い色はこの蝶独特の意匠で、わたしもいつかはこんな蝶を実際にこの目で眺めてみたいとあこがれてしまいます。
ところで・・
「画面端個体ジャスピンの法則」
とはどういう意味ですか?
写真トーシロの恥ずかしながらの質問ですが、よかったらご教示お願いします。汗;
Commented by Sippo5655 at 2012-12-16 21:08
カギカギのグリーン、すごいインパクトですね!
赤と・・・
青も!
このグリーンは、葉っぱ!?
どのようにしてこの造形と色彩が生まれたのでしょう。
ミステリアス!
Commented by fanseab at 2012-12-16 22:10 x
ごまさん、アカエリが主目的の遠征ですので、出し惜しみ?しないでトップバッターで登場させました。
間近で観察するのはこれが2回目ですが、熱帯アジアに来ているのを実感させてくれるアゲハチョウです。
Commented by fanseab at 2012-12-16 22:13 x
ノゾピーさん、小生もできることならボルネオに永住したいところです。ご指摘の通り、撮影枚数は結構な量になりますが、失敗作も山のように造りました。飛翔はアカエリに関してはそれなりの歩留りで満足いたしました。
Commented by fanseab at 2012-12-16 22:16 x
22wn3288さん、コメント有難うございます。
小さい頃に標本を見て憧れ、ボルネオへの夢を掻き立てられたものでした。現実に目の前にしても、やはり憧れが失せることはありません。観察することだけならたやすいアゲハですが、撮影となると色々と気難しい面があります。
Commented by fanseab at 2012-12-16 22:18 x
BANYANさん、暗い環境での飛翔撮影に備えて中速シャッターでの撮影法にこの時から再トライしました。結果、何とかエエ感じに仕上がりました。高速シャッター中心の考え方から模索している途中でしたので、仕上がりに満足して、それ以降のシーズンでの飛翔撮影に自信が出たのでした。
Commented by fanseab at 2012-12-16 22:21 x
naoggioさん、アカエリは暗い林内から明るい林縁に飛び出して来る時、金緑色が金青色に変化したりして、その金属光沢の色の変化はやはり目を見張るものがあります。パラワンのアカエリもいつか見てみたい対象です。
Commented by fanseab at 2012-12-16 22:24 x
OTTOさん、今度の遠征記はあまり長々と引っ張らずに密度の濃いものにしたいと思っております。ご期待下さい。「画面端・・・法則」とは小生が勝手に名付けた経験則で、飛翔写真を撮ると画面真ん中に入った個体はピンボケが多いのに対し、画面端に入った場合はジャスピンになる確率が多いことからネーミングしました。
Commented by fanseab at 2012-12-16 22:26 x
Sippo5655さん、そう、このギザギザパターンの金緑色はアカエリ独特のデザインですね。日本にはおろか、海外でもこのデザインはユニークです。神が造った造形・色彩の妙に素直に感動します。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード