探蝶逍遥記

サトキマダラヒカゲの産卵:その2(9月17日)

 この日も飽きずにサトキマの追っかけをしました。一週間前に比較して♂♀共に個体数が減ってきた印象です。相変わらずヒカゲチョウ♂は腐るほど?飛んでおりました。さて、予想通り16時半過ぎ頃から地上高50cmあたりを緩やかに飛ぶ♀が登場。彼女を追跡すると、ネザサ類に止まりました。                                              ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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D7K-85VR、ISO=400、F10-1/125、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻:16時43分

 葉被りはご容赦を(^^; 笹の葉軸に対して体軸をほぼ平行にしております。この姿勢は産卵態勢ではありません。ただ静止しただけかな?と思っていると、急に体を90度回転し、産卵をスタートさせました。
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D7K-85VR、ISO=400、F7.1-1/125、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻:16時45分

 前回撮影の反省を踏まえ、今回はメインストロボを左上から照射して腹端と卵を明確に表現し、右側方からスレーブストロボを焚いて、蝶もそれなりに明るく表現する作戦。何とか狙いに近い作画ができました。手前側に3卵産み付けられ、その向こう側に4卵目を産み付ける瞬間の絵です。産卵の途中、管理人がわずかに撮影体勢を変えたショックで母蝶は飛び立ってしまいました。葉裏を捲ると・・・。
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D7K-85VR(トリミング)、ISO=500、F13-1/125、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻:16時48分

 合計8卵で、Exifデータから推測した1卵あたりの産卵所要時間は19秒でした。因みに葉先の方角は西向き。地上高66cm。この個体は一旦、どこかに雲隠れした後、10分後に再登場。今度はかなり明るい環境の葉に止まり、産卵をスタートさせました。
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GXR@5.1mm、ISO=200、F6.5-1/60、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:16時58分

 ど真ん中にサトキマがいるにも拘らずピンボケ(^^; どうもこのように背景が明るい部分があるとリコーのAFはいつも迷ってしまいます。そろそろAF精度の良いミラーレスでも購入しようか?と思いたくなります。コンデジを接近させてサトキマの産卵シーンを撮るのにはギフチョウ同様相当に神経を使います。折しも夕刻の東の空には夏雲が湧いておりました。この雲を何とか背景に使いたいと思い、必死で作画をしたのがこの一枚。
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GXR@5.1mm、ISO=200、F9.1-1/400、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:17時04分

 サトキマの翅面に影が生じた失敗作です(^^; やはり面倒でもスレーブでもう1灯右から補助光を当てるべきでした。ここでの産卵数は合計19卵。葉先は南向き。地上高46cm。1卵あたりの産卵所要時間は21秒でした。

 さて、9/10にサトキマの産卵を始めて観察してから1週間。既に記事でご紹介した分を含め、このフィールドで合計、9卵群、110個の産卵を観察できました。その中で第2,5,6の3卵群(全43卵)は僅か30cm↑2に局在しており、このスポットは母蝶がとりわけ好む環境だったようです。また、産卵された卵の継続観察をしていく中で、色々と興味深い現象に出会いました。一つは食害です。サトキマが産卵してから孵化までの期間は概ね1週間と推定されますが、孵化を待たず、卵塊が忽然と消滅するものがありました。9/10観察分で二層に産み付けられた第2卵塊がその事例です。「お月見団子」で形容しましたが、本当に団子を食べてしまう外敵がいるようです。食害と思われる別の事例をご紹介しましょう。
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GXR@5.1mm、ISO=200、F4.6-1/15、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:15時50分

 これは第5卵群で全14卵が産まれておりました。しかし、卵殻が4個残されているだけです。通常、孵化した初齢幼虫は卵殻を食べるでしょうから、孵化した直後に襲われたか、孵化前にカメムシのような吸汁昆虫が卵の内容物(絶好のタンパク源と推定される)を吸い取ったとしか思えません。念のため周辺のササの葉を捲って調べてみましたが、初齢幼虫は発見できませんでした。

 一方、無事に残っている卵群の拡大像を撮影してみました。第7卵群の13卵です。
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D7K-1855改@55mm(トリミング+画像合成処理)、ISO=200、F29-1/200、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻:16時18分

 驚いたことに、「お月見団子」の表面には細かい窪みが沢山あったのです!先にご紹介したヒメウラナミジャノメの卵同様、一見ツルツルに見えるジャノメ類の卵表面は意外と複雑な構造を有しているんですね。そして各卵同士は何か接着剤のような物質で、お互いに結合されているように見えます。ゼフが越冬卵を産む際、休眠芽に接着物質を擦り付け、卵を接着させるのと同じ方策なのでしょうか?

 孵化した初齢幼虫も覗いてみました。第3卵群から孵化した全11頭です。
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D7K-1855改@35mm、ISO=200、F29-1/200、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻:16時23分

 この卵群は全15卵ですから、4頭が行方不明です。上述した食害の被害に遭ったのでしょうか? ご覧の通りの群居状態で、透明感のある幼虫の頭部が印象的です。また、画面左側がネザサの葉先の先端ですが、この部分が幼虫の食痕に相当します。続いて落日寸前の夕陽を背景光として利用したショットも撮りました。
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D7K-1855改@35mm(トリミング)、ISO=200、F29-1/320、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻:16時29分

 幼虫の体内が透けてみえます。腹部にある濃緑色の部分は摂食されたササ類でしょうかね。この日は17時過ぎになると、西側低い位置にあった厚い雲に夕陽が隠され、急に暗くなりました。その時点でどうやらサトキマ♀も産卵活動を中止した様子でした。何となくですが、体内時計ではなく、照度に感応して産卵活動のスイッチをON/OFFしている印象を持ちました。
by fanseab | 2012-09-18 22:37 | | Comments(10)
Commented by Sippo5655 at 2012-09-18 22:50
興味深く拝見させていただきました。
成虫になる確率って、、
本当に低いんですね・・・
私はアカボシゴマダラの産卵を見て
数日後に同じ場所に出向いてみました。
産卵は各所にあったのですが
見つけることができたのは幼虫1匹のみでした。
あとは影も形もありませんでした。
卵同士、くっついているんだ、、
これも何か、母蝶の愛でしょうか?
生き残った子供たち
無事、成虫になれると良いですね!
「光」に反応する、、産卵も・・・そうですか。
勉強になります。
Commented by Garuda at 2012-09-19 01:20 x
すれ違った日の記事ですね!
実はコムラサキを撮りに行く途中でした。
娘が一緒なので薮漕ぎ無しで到達できるポイントまででしたが。
帰り際に目印のところを2~3箇所覗き込んでみましたが、娘がどんどん先に行ってしまうので何も発見できませんでした。
Commented by yoda-1 at 2012-09-19 12:26
これまた素晴らしい産卵+幼虫の記録ですね。
ずっと追跡調査を楽しみにします。
しかし、熱心に産卵している母蝶は逃げないのでしょうか?
Commented by fanseab at 2012-09-19 23:20 x
Sippo5655さん、サトキマのように卵塊で産みつける種は、だいたいふ化してから成虫に到達する歩留まりが低いと思います。沢山産んで、少しでも子孫が残せればOKの戦略ですね。第一、産んだ卵が全て無事成虫になったら、サトキマで溢れて、食草が枯渇します。卵が捕食されたりして、生態系のバランスが保たれているんでしょう。
Commented by fanseab at 2012-09-20 00:19 x
Garudaさん、コムラサキ探索でしたか?それはお疲れ様でした。あの時間帯だとコムラサキもそろそろ活動を停止する頃でしょうか?サトキマの卵、幼虫類は本文中にも記載した通り、食害に会う可能性が高く、目印近くで葉を捲っても何も発見できない場合があります。ご注意あれ!
Commented by fanseab at 2012-09-20 00:27 x
yoda-1さん、ゼフと異なり、ジャノメ類の卵は直径も大きく、拡大撮影が比較的楽ですね。何とか継続観察ができればいいのですが。。。母蝶は産卵中、かなり鈍感になりますが、卵塊を産みつけていく後半は、やや敏感になる傾向がありました。
Commented by ダンダラ at 2012-09-20 10:09 x
fanseabさんらしい、緻密な観察ですね。
確かに16時を過ぎると、あれほど活発に飛翔していたサトキマの活動もゆっくりになる印象ですが、今頃の個体はこの時間帯が産卵時間なのですね。
参考になりました。写真の質も素晴らしいです。
Commented by naoggio at 2012-09-20 17:16 x
いやー、お見事です。
キマダラヒカゲの母蝶もここまで素晴らしいショットを残してもらえれば本望ではないでしょうか。
身近な蝶なのにこんなシーンは見たことがない・・・
いけませんねえ、もっとしっかり観察しないと。
よもやと思いましたがキマダラヒカゲの卵の表面にもこんなに素敵な網目模様があったんですね。
ストロボの多灯まで用いてまとめあげる写真の腕前、さすがですねえ。感心するばかりです。
Commented by fanseab at 2012-09-21 00:15 x
ダンダラさん、恥ずかしながら小生もこれまでまともにサトキマの生態観察をしたことがありませんでした。春型と夏型で微妙に行動差もあるようですが、未だ把握しきれていません。
産卵時間のピークはこの時期、16時半頃と推定されます。
Commented by fanseab at 2012-09-21 00:17 x
naoggioさん、産卵シーンは種類はともあれ撮影のアングルが制限されることが多く、困難を伴いますが、卵塊を産み付ける性質を利用して、一回の産卵行動につき、少なくとも15回位はシャッターチャンスがある訳で、他の種よりも狙いやすいかもしれません。ギフやヒメギフの産卵シーンと同様ですね。
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