探蝶逍遥記

台湾遠征記:(13)11月22日午前中その3

 林道を更に進むと、遠くから轟音が聞こえてきました。どうやら林道の傍らに大きな滝があるようで、水滴が微かに届いてきておりました。右手にある石垣の上の草叢を眺めていると、突然すばしこいシジミチョウが舞い降り、少し開翅しました。                                                                    ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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D7K-34、ISO=500、F9-1/500、-0.7EV、撮影時刻:9時46分

 最初はウラギン♂かなと思って裏面を良く見ると全く違います。すぐにヒイロシジミ(Deudorix epijarbas menesicles)♂と判明。景気良くすぐに全開してくれました!
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D7K-34、ISO=500、F13-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:9時48分

 ヒイロに出会うのはこれが二回目。昨年9月末にスポット的に訪れた台北で♂閉翅はものにしておりましたが、開翅撮影はこれが初めてです。Deudorixの中で最普通種にして広域分布種の本種は東南アジア遠征のどこかで出会っていて不思議はないシジミのはずですが、どうもこれまで縁遠い相手でした。♂の表翅は将に和名の「緋色」そのもの。ウラギン♂の赤橙色とはやはり質の違う鮮やかさでありました。惜しむらくは左後翅の破損。自慢の長大な尾状突起も切れておりました。新鮮な個体でのリベンジリストに追加されたわけでございます。石垣に登っての不安定な姿勢で更にヒイロに接近し、ほぼ正面からの撮影にもトライ。
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D7K-34、ISO=500、F13-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:9時48分

 デカい複眼は真っ黒でドスの効いた迫力があります。図鑑でDeudorix属の♂を見るといずれも図体に比較して巨大な複眼が目に留まります。テリ張り位置でライバル♂をいち早く発見し、♀を追跡するために進化したものなのでしょう。撮影した後、すぐに目の前に滝が現れました。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F9.1-1/50、-0.7EV、撮影時刻:9時49分

 落差は優に20mはあるでしょう。滝壺から正面方向に水滴が吹き飛ばされ、撮影機材がズブ濡れになりそうなので、一旦、機材をリュックに収納し、駆け足で滝壺横を通り抜けました。ここは真夏には恐らく黒系アゲハ類♂の良き吸水ポイントになるものと思われます。因みに↑の画像で、画面右下に見えている石垣がヒイロを撮影するためによじ登った場所です。機材を再度セットしてフト路上を見ると、蝶の轢死体が。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F4.6-1/90、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:9時54分

 どうやらルリモンジャノメの♂のようです。この林道の車両通行量はたかが知れておりますので、轢かれたルリモンも運が悪い個体ですが、そもそも個体数が多いので、轢死体を見ることができたのかもしれません。更に進むと林道左手の草叢に怪しい影が。注意して接近すると、ルリモンジャノメが大きな葉の上で集団吸水しておりました。
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D7K-34、ISO=500、F11-1/100、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時04分

 これまでの経験から、ルリモンは群れることなく、いつもポツンと単独で見出されることが多いので、この光景には驚かされました。しかし、吸水なら何も葉の上から水分を補給する必要はありません。前日降った雨で路上は濡れておりますし、もちろん、枯葉の湿り気からでも構わないはずです。しかし、この疑問は直ぐに解消しました。ルリモンが4頭群れていたすぐ隣に樹液酒場があったのです。どうやら、酒場に集う昆虫達が樹液を周辺に撒き散らしていて、ルリモンはそのお零れに授かっていたと推察されました。その樹液酒場で睨みを利かしていたのが、以前にもご紹介したタイワンコムラサキの♂でした。
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D7K-34、ISO=500、F11-1/100、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時06分

 コムラサキですから、やはり樹液を吸う姿は自然で絵になるものです。もう少し接近して広角画像を撮ろうと思いましたが、ちょっと控えることにしました。それはこんなお方が近くにおられたからです。
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D7K-34、ISO=500、F11-1/100、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時05分

 全身赤黒い蜂!その長さは3cmほどもあります。海外で大型蜂に出会うと、先ずはその攻撃性と毒の強度が気になります。日本のスズメバチのような風体なら、何となく恐ろしさが推定できますが、この蜂は見たこともない色合いなので、様子見を決め込みました(^^;
ネットで調べると、どうやらアシナガバチの一種、Polistes gigas(台湾名:棕長脚蜂)のようです。頭部と複眼が全く同一色・・・、これが不気味さを漂わせていて、近寄りがたいのです。ただ、毒性はともかく、攻撃性はさほど強くないようです。樹液酒場には日本でもお馴染みのアオカナブン(同種ではないかもしれません)も客の一員でしたので、思わずパチリ。
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D7K-34、ISO=500、F11-1/100、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時11分

<4月17日追記>
ze_phさんからご指摘があり、これはツノカナブン(Trigonophorus roschildi)だそうです。ze_phさん、有難うございました。確かに頭部先端を見ると、カブトムシを彷彿とさせる小さな角が付いております。

 
 さて、この樹液酒場を形成していた樹木は樹肌に独特の模様があり、この後、樹液酒場を探索する際の良き指標にもなったのでした。<次回に続く>
by fanseab | 2012-04-16 22:22 | | Comments(12)
Commented by ze_ph at 2012-04-17 00:59 x
紅玉のように飛ぶヒイロシジミや赤色系Rapalaを見てはいつも撮りたいなあと思うのですが、未だ開翅に当たったことがありません。
羨ましいです。
最後のカナブンはツノカナブン Trigonophorus rothschildi かと思います。
Commented by kmkurobe at 2012-04-17 10:28 x
なるほど翅表はウラギンシジミ模様。尾状突起有り、裏は暗色。
なかなか華麗なシジミチョウですね。
最後のツノカナブン昔おみやげに貰ったことがあります。
一回り大きくて本当に綺麗ですね。
Commented by naoggio at 2012-04-17 11:31 x
ヒイロシジミ、見事ですね。息をのむ美しさです。
写真から撮影時の緊張感が伝わってきました。
ルリモンジャノメの仲良く並んでいる姿は本当に面白いです。
その原因をすぐに洞察してしまうところもさすがですねえ。
私だったら考えもつかないと思います。
Commented by yoda-1 at 2012-04-17 12:49
ルリモンの集団吸水が圧巻ですね。
緋色は一度は生で鑑賞したい色合いです。
アシナガバチは似たようなものをYODAも撮影しておりました。
http://yoda1.exblog.jp/12324339/
の#5ですが、少し腹部の模様が違うような・・・。
さすがに台湾の書店で一版昆虫図鑑は購入しなかったです。
Commented by Sippo5655 at 2012-04-17 21:24
ヒイロシジミ・・・!!
なんて綺麗な色合いの翅表、、、
そして、本当に複眼が大きいですね(◎ー◎;)
正面から見るとさらに圧倒されます。
翅欠損していても、充分すぎるほど美しい色合いにうっとり~♪
葉っぱの上に並んだルリモンジャノメ^^
これまた楽しいシーンですね!
なるほど、こぼれた樹液を、
そういえば私も以前、葉っぱの上に
2頭のサトキマダラヒカゲを見たことがありました。
飛び去った跡には、鳥の○○が(爆)
アオカナブン、、まるで宝石みたい!!
この木肌が、次のドラマへと?
楽しみです(^0^)/
Commented by himeoo27 at 2012-04-17 22:13
ルリモンジャノメが大きな葉の上で集団吸水
面白い絵ですね!
驚き桃の木山椒の木です。
また2コマ目の緋色シジミとってもプリテイです。
Commented by fanseab at 2012-04-17 22:16 x
ze_phさん、ご無沙汰しております。
ツノカナブンのご指摘有難うございます。早速記事に修正コメントを入れました。
それにしても貴殿がヒイロ表翅を未撮影とは驚きました。むしろ珍品シジミの開翅を次々とアップされているので、普通種まで手が回らないのかな?と(笑)いずれにせよ、Rapalaも含め開翅の時間帯・タイミングは中々読み切れないものがありますね。
Commented by fanseab at 2012-04-17 22:19 x
kmkurobeさん、小生もまだヒイロに不慣れなので、最初はウラギン?と思いました。♂♀で大小差が激しいシジミで♀はムラツ程度に大変でかく、♂とは全く印象が異なり、ウラギンと誤認することはありません。
ツノカナブン、色合いの鮮やかさに思わずシャッターを押しました。
Commented by fanseab at 2012-04-17 22:22 x
naoggioさん、ヒイロの表翅の色合いは日本産シジミにはない鮮やかさを有しております。緑色一色の草地に舞い降りると、それはそれは眩しい位です。
ルリモンの挙動は意外と掴みにくい種でして、こんな集団での挙動は珍しく、思わず何故だろう?と考えてみました。
Commented by fanseab at 2012-04-17 22:27 x
yoda-1さん、ルリモンの集団吸水・吸汁場面はネット上でもあまり見かけません。以前も記事中でも触れたように知本付近でのルリモンの個体数は半端でないので、このようなシーンを拝むことができたのかもしれません。
ヒイロは是非次回の台湾遠征でご覧になってください。また貴殿の撮影されたアシナガバチ画像:#5は確かに腹部の斑紋が微妙に異なりますが、同種ではないかと思います。本種は香港にも分布しているようです。
Commented by fanseab at 2012-04-17 22:32 x
Sippo5655さん、ヒイロ綺麗でしょ!
シジミチョウの複眼って黒い種類が多いのですけど、ヒイロ♂のは別格の迫力があったので、思わず正面から狙いたくなりました。
樹液酒場の周囲では日本でも色々とドラマが展開されますね。恐らくアシナガバチに脅かされたツノカナブンが逃げながら○○を落としていくことも考えられます。それが葉の上に落ちて・・・なんて、推理はどうでしょうか?
Commented by fanseab at 2012-04-17 22:35 x
himeooさん、普通種でも色々と観察すると面白い生態がわかってきます。台湾遠征では低温で曇りがちの日が続き、陽が差さないと飛び出さない蝶に対しては不作でしたが、あまり気温に関係しない対象種の観察がじっくりできたメリットもありました。ルリモン集団吸汁シーンはそんな成果の一つでした。
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