探蝶逍遥記

コムラサキの越冬幼虫探索(3月3日)

 土曜日はゼフ越冬卵探索をする計画でしたけど、2/29に関東地方に降った降雪で山梨山間部の残雪が予想されたので、急遽近場の多摩川でコムラサキの越冬幼虫探索に切り替えました。管理人はこれまで関西在住時を含め、延べ5シーズン(と言っても冬場限定ですが)、首題幼虫を探してきました。しかし、どうにも見つけられず、半ば諦め状態でした。ただ2年前から自宅近所の多摩川縁で安定的に成虫を観察できるようになりましたので、再度チャレンジしてみました。最初は昨年秋に♀の産卵挙動を確認したタチヤナギ?の株を確認してみました。しゃがみこんで目線を樹肌に沿って追跡していきます。すると何とあっけなくも10分もしないうちに1頭を発見。続いて別の2頭を見つけることができました。                                    ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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D7K-20、ISO=100、F14-1/160、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻: 13時36分

 画面に2頭写っています(黄矢印)。噂に聞いていた通り、小さいです(体長約10mm)。ただ、最初の1頭を発見した後で、残りの2頭はすぐに目に飛び込んできました。目の慣れとは恐ろしいものです。魚露目で環境描写をしてみました。
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D7K-1855-gy8(トリミング)、ISO=200、F29-1/60、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻: 13時29分

 この個体は頭部を下向きにしております。続いて別の個体を改造マクロで深度合成撮影。
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D7K-1855改@31mm(トリミング+3コマ深度合成)、ISO=200、F20-1/250~1/320、-0.7~-1.3EV、外部ストロボ+スレーブ1灯増灯、撮影時刻: 13時54分

 ゼフ越冬卵とは異なり、この程度の拡大率だと深度合成も楽ですね。この後、この株から300m程西側に移動し、河川敷に多数生えているタチヤナギを順番に確認していきました。結局2時間強、合計8本のヤナギを探索し、何と合計24頭の越冬幼虫を確認できました。「これまでの5シーズンに費やした努力は一体何だったのだろう?」と管理人自ら唖然となる成果でした。このポイントでの別個体の事例を示します。
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D7K-1855-gy8(トリミング)、ISO=200、F29-1/60、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻: 13時29分
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GXR@5.1mm、ISO=100、F5.1-1/50、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:14時20分

 上の画像は屈曲した溝に合わせて体をねじ曲げて静止しております。画面中央の幼虫静止場所がお分かりになりますでしょうか?この個体は体色が黒褐色ではなく、黄褐色のため、発見しずらい部類に属します。下の画像含め、比較的大き目(と言ってもせいぜい12mm程度)の個体は整った縦溝ではなく、不規則な形状の溝に潜り込むような傾向を感じました。

 今回の観察でコムラサキ越冬幼虫の探索・発見ポイントを自分なりに整理してみると以下の通りになります。

(1)探索すべきヤナギは樹肌の縦亀裂が適度に入った直径15cm程の幹が好適。事例はこれ。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F9.1-1/80、-0.7EV、内蔵ストロボ

 この程度の太さだと縦亀裂の中は樹皮と同じ褐色で、この中に潜む黒褐色の幼虫は発見が容易。これより太い幹では亀裂が樹肌全面に入って、樹肌全体が黒味がかり、幼虫体色(黒褐色)と同化して発見困難。これがその典型事例。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F9.1-1/50、-0.7EV、内蔵ストロボ

 逆に細すぎる幹(枝)では亀裂が少なくて、幼虫が身を潜める場所が少なくてNG。探しても無駄骨になる。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F9.1-1/50、-0.7EV、内蔵ストロボ

(2)探索する日の天候は曇天がベスト。晴天は樹肌に入る亀裂に影が濃く出て、幼虫発見が困難で避けるべき。どうしても晴天の日に実施する場合は、樹肌に自分の影を落として、亀裂と樹肌表面のコントラスト差を小さくすると幼虫の居場所が発見しやすくなる。同様な理由で、雨天で樹肌が雨で濡れていると、樹肌全体が黒褐色を呈して、幼虫体色と区別がつかなくなるので、雨天後は避ける。

(3)1頭の幼虫が発見できた場合、その幹より複数頭芋づる式に発見されるケースが多い。母蝶が好みの木に固めて産卵する習性があると思われる。

 この冬、老眼に鞭打って(笑)直径僅か1mmにも満たないゼフ越冬卵を探索した経験が活きたのか、長さ10mmもある!(ゼフ卵直径の10倍以上!)幼虫は楽に発見できたのかもしれません。この日に見出した幼虫全24頭の静止していた方角・位置(高さ)を下記にまとめてみました。

<方角>
北西~北東: 2頭
北東~南東: 13頭
南東~南西: 5頭
南西~北西: 4頭

 圧倒的に東向きが多いのですけど、意外と南・西向きに付いていた幼虫が多いのにもビックリです。同じコムラサキ亜科のゴマダラやオオムラサキの場合は樹上ではなく、落葉下ですが、北ないしは東向きのエノキ根元から見つかるケースが殆どで、陽射しを直接受ける南向きから発見した経験はありません。樹上越冬タイプだと乾燥に強いので南向きでも平気なのでしょうか?

<地上高>
50cm未満:  なし
50cm以上100cm未満: 8頭
100cm以上150cm未満: 10頭
150cm以上:  6頭

 なお、今回は脚立等を利用した管理人の身長を超える高さでの観察は実施しておりません。ただ高い位置では相対的に幹が細くなり、身を潜める樹肌亀裂も激滅するので個体数は少なくなるものと思われます。また、今回観察で最も低い位置にいた個体は地上高54cm、逆に最も高い位置で確認されたのは173cmでした。観察した8本のタチヤナギで最大9頭付いていた「御神木」については、できれば春先以降、幼虫の継続観察を実施してみたいと思います。

 この日、ヤナギの樹肌をチェックしていると、樹洞の中に潜むカメムシの越冬集団に出会いました。
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D7K-1855-gy8(トリミング)、ISO=200、F29-1/60、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻: 14時59分

 ネットで調べてみると、ジュウジナガカメムシ(Tropidothorax cruciger)のようです。ヒメジュウジナガカメムシ(T.belogolowi)の可能性もありますので、詳しい方ご教示頂ければと思います。頭部を下に向けると、背面の模様は完璧ドクロマークになります。樹洞に潜むド派手なドクロマーク集団は大変写欲をそそるものでした。ただ、こうした状況でストロボ光を樹洞の奥まで回すのは至難の業で、LED光をファイバーガイドで照射する等の工夫が必要ですね。
by fanseab | 2012-03-04 12:13 | | Comments(12)
Commented by himeoo27 at 2012-03-04 16:12
>2時間強、合計8本のヤナギを探索し、
>何と合計24頭の越冬幼虫
コムラサキの越冬幼虫を見つけて貰ってもすぐ見失う
私には信じられないような凄い数字です。
ゼフ卵探しで貴兄の目が進化したのかな?
Commented by konty33 at 2012-03-04 17:18
小さな幼虫なのに沢山見つかりましたね。
まず、探すべき樹皮の木を探すと成果が多そうですね。
kontyも同様の樹皮の木で見つかりましたので、記載されている探しやすい樹皮の特徴は同感だと思いました。
バックの川の環境も写った1,2枚目が良い感じです。
Commented by fanseab at 2012-03-04 21:42 x
himeooさん、この幼虫、一旦見つけてしまうと、発見するコツのようなものが体得できて、意外と楽に連続的に発見できました。ただ、体色が褐色系の個体は確かに目線を切るとその存在がわからなくなったりします。
ご指摘の通り、ゼフ卵探索による老眼トレーニング?の成果で目が進化したのかもしれません。
Commented by fanseab at 2012-03-04 21:46 x
kontyさん、この幼虫の特徴は「小さい」ことではなく、「か細い」ことだと思います。この特徴故、幅広のゴマダラやアカボシ越冬幼虫と同じイメージで探すと失敗してしまうのですね。
幼虫が発見されたヤナギの群落とは別にここからかなり離れたポイントでは、10本のヤナギから全く幼虫が発見できませんでした。母蝶の産卵行動パターンを示唆する事実だと思います。
Commented by otsuka at 2012-03-04 23:09 x
コムラサキの幼虫はこんな所で越冬しているんですね。それにしても見事な保護色の上に10mmと小さいのに、よくたくさん見つけられましたね。
ここまで情報を開示いただいていれば私にも探せそうとも思いますが、そろそろ越冬も終了でしょうか。
Commented by yoda-1 at 2012-03-05 12:46
このまま専門雑誌に投稿できる感じのレポートですね。
素晴らしいです。
カメムシは、たぶん望遠マクロ+上付き外部ストロボで奥まで明るくなるように思いますが、どうなのでしょう。
Commented by fanseab at 2012-03-05 22:00 x
otsukaさん、蝶の幼虫で樹上で越冬するタイプは元来少ないので、探すのには慣れが要りますね。実は幼虫のサイズが約10mmに揃っているため、発見しやすいことがあります。もしもサイズガマチマチだと、もっと探索難易度が上がるだと思います。コムラサキ幼虫の越冬明けはヤナギの芽吹き時期が一つの目安でしょう。小生のポイントは梅の開花遅れ同様、まだもう少し先ですが、神戸とか陽だまりにあるようなヤナギだと早まる可能性もあります。チャレンジしたら如何でしょうか?
Commented by fanseab at 2012-03-05 22:04 x
yoda-1さん、コメント有難うございます。
カメムシ撮影技法の件ですが、仰る通り、樹洞内のカメムシに限定して視野を絞って写すのであれば、ご指摘のやり方でOKです。ただ、小生はとにかく魚露目で環境描写を主体にしたかったので、単純に外部ストロボ単体で光を廻すのが厳しかった訳です。
Commented by naoggio at 2012-03-07 07:41 x
よく見つかりましたねえ。素晴らしいです。
kontyさんへのコメに書かれておいででしたが、ヤナギの群落によってオール・オア・ノットというのも面白いですね。
Commented by clossiana at 2012-03-07 17:13
コムラサキの幼虫は中学生の頃以降は見ていません。何度か挑戦はしているのですが見つけられないでいます。ですから2時間で24頭とは驚異です。この幼虫を見つける為のヒントは大変勉強になりました。確かに径の大きい樹の幹はしわしわで、その一つ一つの掘り込みが深いですから探すとなると気が遠くなるほど
沢山のしわを見なければならないですから根気のない私はすぐに飽きてしまいそうです。でもしわが少なければ作業がはかどりますね。今度からは樹を選ぶことから始めます。ところで幼虫がいる方角(北向きとか南向きとか。。)に何か傾向のようなものはありましたか?自分の影を利用するということは南向きに多いということでしょうか?とにかく楽をして探そうという魂胆ですので、よろしくお願い致します。
Commented by fanseab at 2012-03-08 00:07 x
naoggioさん、お蔭様で大量発見できました。
恐らく♀の産卵挙動に関係するのでしょうけど、あるヤナギ群落で産み付けた後、別の群落に移動してまた産卵・・・を繰り返すのだと思います。その時、一つの群落を飛び越して目的の群落に行くと、全く産卵されていない群落ができるのかもしれません。まぁ、真相は不明ですけど。
Commented by fanseab at 2012-03-08 00:12 x
clossianaさん、中学生の頃既にご覧になっていたとは流石です。konty、naoggioさんへのレスにも述べましたが、あるヤナギ群落を数本チェックして見つからない場合は、ちょっと離れた群落で試すのも一考です。当たり前ですが、産卵されていない群落を探しても徒労に終わると思います。その意味で河川敷に連続して生えているヤナギ群落は対象を絞り難く、探索は避けるべきでしょうね。できれば離散的に存在する群落を2,3絞って探すのが効率的と思われます。
幼虫の向きの傾向については本文記事をご覧ください。
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