探蝶逍遥記

台湾遠征記:(6)11月21日前半その5

 センダングサ群落では他にも多くの蝶が訪れ、管理人を楽しませてくれました。最初はウラナミジャノメ(Ypthima multistriata)の♀。                                                                    +横位置画像はクリックで拡大されます++
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D90-85VR、ISO=200、F13-1/160、-0.7EV、撮影時刻:11時48分

 Ypthimaはなかなか全開してくれないので、必死に撮りました(^^) 少しスレ品なのが残念です。のっそりと飛ぶタイプですね。この個体はすぐに翅を閉じてしまいました。
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D90-85VR、ISO=200、F11-1/250、-0.7EV、撮影時刻:11時49分

 ところで、ウラナミジャノメは日本ではそれなりに珍品ですけど、実は台湾産の本種和名・学名表記はちとややこしいのです。以前ご紹介した白水博士の名著、「原色台湾蝶類大図鑑」では「タイワンウラナミジャノメ(Y. multistriata)」と表記されておりました。その後タイワンウラナミジャノメ(Y. motshulskyi)と表記する書籍も登場しましたが、1997年になってタクサが再整理された結果、種multistriataについては、下記のようにまとめられています(※1)。

(1)名義タイプ亜種:Y. multistriata multistriata :台湾および中国東部
(2)韓国亜種:ssp. koreana :韓国
(3)日本本土亜種:ssp. niphonica :本州・四国・九州
(4)対馬亜種:ssp.tsushimana :対馬

 和名については、従来通り、(1)をタイワンウラナミジャノメ、(3)をウラナミジャノメ、(4)をツシマウラナミジャノメとする向きもありますが、管理人としては、(1)~(4)まとめて『ウラナミジャノメ』と呼ぶべきと思っております。ただ現在でもmultistriataの扱いは流動的でありまして、(1)(3)(4)をそれぞれ独立種とする考え方もあります(※2)。いずれ正確なDNA解析により各々の帰属が明確になることでしょう。因みに種motshulskyiには「チョウセンウラナミジャノメ」の和名が与えられております。

 なお、ご存じの通り、日本産ウラナミジャノメの後翅裏面眼状紋は3個(三つ目)で台湾産亜種も同じです。台湾には三つ目タイプとして、他に、(A)エサキウラナミジャノメ(Y.esakii)、(B)タカムクウラナミジャノメ(Y.perfecta)(C)タカオウラナミジャノメ(Y.wenlungi)の3種を産しており(他にムモンウラナミジャノメ(Y.norma postcalis)もおりますが記録に疑問があるのでここでは3種とします)、ウラナミとエサキ、タカオは低標高地、タカムクは高標高地(1000m以上)と、標高で棲み分けがなされているようです。管理人が訪れた知本森林遊樂區は標高300m程度なので、タカムクは生息していないことになります。次にウラナミとエサキの識別は上記三つ目(①第1b、②2、③6室に出現)の中で、②と③の眼状紋の直径比率で見分けます。エサキは通常②と③はほぼ同じ大きさか、③<②。ウラナミは逆に③>②となります。なお、エサキの台湾北部海岸線沿いに局所的に分布する亜種ssp. wangiの一部では③>②の個体が出現するそうです(※2)が、これは生息場所で区別できそうです。またタカオはその和名通り、高雄県の一部にしか生息しておりませんので、これも区別可能です。上記議論について詳しく知りたい方は、下記(※)参考文献を参照下さい。

 さて、センダングサ群落に、午前中のほぼ最後に登場したのは大型セセリの一角、トビイロセセリ(Burara jaina formosana)でした。
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D90-85VR、ISO=200、F11-1/250、-0.7EV、撮影時刻:11時50分

 Burara属は北タイでoedipodea、ボルネオでharisaを撮影済ですので、これが3種目となります。台湾産本属はjaina 1種のみですので、同定には全く苦労しません。性別は前翅端の尖り方から判断して♀でしょうか? <次回に続く>

※参考文献
(1)Dubatolov,V.V. and A.L.Lvovrky,1997. What is true Ypthima motschulskyi(Lepidoptera, Satyridae)? Trans.lepid.Soc. Japan 48: 191-198
(2)高橋真弓・城内穂積, 2011. “カメヤマウラナミジャノメYpthima wangi Lee,1998”(台湾産) の分類学上の階位について, Butteflies(Teinopalpus) 58: 4-13 
by fanseab | 2012-02-09 22:21 | | Comments(4)
Commented by naoggio at 2012-02-11 08:25 x
エサキウラナミの後翅眼状紋 ③≦②というお話を読んで早速ネットでエサキの画像探してみましたが本当にそうなんですね。③が②より小さいという事を念頭に置いて改めて見てみると、エサキの斑紋、なんだかとても変わった感じに見えます。違和感すら覚えます。知識というのは大切ですね。
トビイロセセリ、縁毛の色彩の変化がいいですね。
Commented by himeoo27 at 2012-02-12 08:01
「トビイロセセリ」色合いといい、形状といい、目の大きさといい、どのポイントもとっても可愛いですね!この手の大型セセリとっても大好きです。
Commented by fanseab at 2012-02-13 00:21 x
naoggioさん、今回記事を書くにあたり、三つ目タイプの斑紋差異を調べ直してみました。類似した斑紋ですから、研究者の眼も随分混乱させたようです。エサキも代表的なタイプなら同定間違いはしないと思います。
Commented by fanseab at 2012-02-13 00:26 x
himeooさん、連続コメント恐れいります。仰る通り、赤みがかった大型セセリは日本にいないので,大変魅力的ですね。飛んでる時も羽音が聞こえる感じですね!
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