探蝶逍遥記

大雪山の高山植物群落調査に関する報告会聴講(11月6日)

 6日(日曜日)は、新宿中央公園内エコギャラリー新宿にて開催された首題報告会に赴きました。正式な表題名は、下記の通り。

「大雪山の花園は今 ~高山植物開花フェノロジー調査2011年報告会~」
主催者はNPO法人アース・ウィンド(北海道)、
演者は北海道大学大学院地球環境研究院准教授の工藤 岳氏。

++画像はクリックで拡大されます++
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報告会の画像は全てGXRで撮影。

 大雪山はウスバキチョウやアサヒヒョウモンの群れ飛ぶ聖地ですが、彼らがホストとする高山植物群落の開花状況にスポットを当て、長期にわたる定点観測で地球温暖化の影響評価を実施する活動の年度別報告会でした。内容は以下の2テーマ。
(1)高山生態系の成り立ちとその脆弱性
(2)大雪山で起きている生態系変動
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 実際の調査は工藤研究室員のみならず、開花時期(6~9月)に調査担当ボランティアがデータ収集をする市民参加型モニタリングで実施されています。主催者側が「リサーチ登山花ボランティア」と名付けた活動は2003年よりスタートし、3年間の準備・検証期間を経て2006年から本格的に調査を実施しているもの。調査区域(プロットと呼称)はボランティアが参加しやすい場所が考慮されていて、以下の4プロットが選定されています。
(a)黒岳:①雪田プロット(標高1900m)、②風衝地プロット(同1960m)
(b)赤岳:③雪田プロット(同1980m)、 ④風衝地プロット(同1840m)
なお、④は管理人も本年6月に訪れたコマクサ平です。
各プロットの地表にはそれぞれデータロガー(自記温度記録計)が設置されており、温度モニタリングも1時間間隔で通年測定される仕組み。対象植物は10数種類に絞られています。

 当日紹介された2006~2010年の僅か5年間のデータにおいても2010年に発生した異常気象の影響で例年に比較して開花時期がずれ込む等の知見が得られています。
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 実はこの調査活動は2010年度より、環境省が管轄する「環境モニタリングサイト1000」として選定され、この活動は今後100年にわたって継続することが計画されています。また「モニタリングサイト1000」では必須調査活動項目として「蝶のライントランセクト調査」が義務づけられており、本年2011年よりこちらの活動もスタートしたとのこと。
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 地球温暖化の影響評価にはやはり100年レベルの経年データ蓄積が必要でしょう。植物の開花時期と蝶の活動・個体数変動推移が100年単位で併行調査されれば、高山蝶の保全に必要な貴重なデータが得られるでしょうね。ウスバキについて言えば本来丸2年かけて羽化するのだけれど、近年、越冬卵が翌年孵化した後、幼虫越冬せずに当該年内に成虫羽化する個体も増えているとの噂を聞いたことがあります。ホストであるコマクサの開花時期が100年後に大幅に変動し、コマクサの個体数に影響を及ぼすことも十分に考えられます。ウスバキの聖地:コマクサ平についても100年後、現状のままでいられるのか?それとも「昔ここに沢山のコマクサが咲いていたので、コマクサ平と命名されましたが、その後地球温暖化の影響もあって、コマクサは絶滅し、現在ではその面影もありません・・・」なる逸話になり下がるのか?報告会を聴講して後者のような最悪のストーリーだけは避けたいものだ、と心底思ったのでした。いつまでもウスバキが大雪で楽しめることを念じて、6月に撮影したウスバキ画像(イワウメ吸蜜)、および黄色の花弁が印象的なメアカンキンバイ(Potentilla miyabei:バラ科)をアップしておきましょう。

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D90-85VR、ISO=400、F11-1/500、-0.7EV、撮影月日・時刻:6月27日、7時50分
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D90-85VR、ISO=200、F4.5-1/1600、-0.7EV、撮影月日・時刻:6月26日、7時56分

<参考:クリックで当該サイトにジャンプします>
a) 北大・工藤研究室
b) NPO法人アース・ウィンド
c) 環境省モニタリングサイト1000
by fanseab | 2011-11-08 22:33 | | Comments(2)
Commented by naoggio at 2011-11-10 17:38 x
最近クマソの撮影ばかりしていましたが、南方系の蝶の観察をしていると高山蝶や北方系の蝶のことが本当に心配になりますね。
今さら遅過ぎるかもしれませんが、人間の営みをもっとゆっくりしながら、周囲のことをじっくり色々研究すれば、地球が寿命を終える頃には人間ももう少し利口になっているのではないかなと思います。
ウスバキチョウ、いつかまた見に行きたいものです。
Commented by fanseab at 2011-11-10 21:53 x
naoggioさん、記事では詳細に触れませんでしたが、報告によれば、温暖化の影響で、永久凍土層の崩壊・土壌の乾燥化が進行し、笹類が想像以上のスピードで高山植物群落を侵食している実情も示されています。100年以内に顕著な影響が出ることも危惧されます。大雪山同様、中央アルプスも深刻な兆候が出ているのかもしれませんね。
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