探蝶逍遥記

奄美大島遠征記(4)10月10日午後後半戦

 ちょっぴり贅沢なランチで元気を貰った管理人は、午前中訪れたポイントAに戻りました。ここで仕掛けたトラップを探したのですが、跡形も無く消えておりました。「くそーっ、犯人は誰だ~!」と呟きながら周囲を探すと直ぐに犯人が判明。小さな野良猫の仕業だったようです。トラップが目的の蝶以外に消費されることはよくありますが、ちょっとガッカリ。仕方なくウロチョロすると、ヒメシルビアを撮影した地点より西方に別のヒルトッピングしそうな見晴の良い場所を発見(以後ポイントCとします)。ここは前方の林が切り込まれていていい雰囲気です。下方のカラスザンショウでモンキアゲハ♀が産卵行動を取っています。暫く観察していると、急に♂が接近してきて求愛飛翔モードに。結構長時間持続するので、ここはじっくり300mmで撮影。                                                             ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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D7K-34(トリミング)、ISO=640、F4-1/3200、-1.3EV、外部ストロボ、撮影時刻:15時58分23秒
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D7K-34、ISO=640、F4-1/3200、-1.3EV、外部ストロボ、撮影時刻:15時58分30秒
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D7K-34、ISO=640、F4-1/3200、-1.3EV、外部ストロボ、撮影時刻:15時58分41秒

 アゲハの求愛で良く見られるように♂が♀を先導するパターン。ここで興味深いのは後に従う♀が常にストローを延ばしている点です。まるで♂が空中に撒き散らすフェロモン物質を吸飲確認しているかのような光景。実際、この行動にはどんな意味があるんでしょうね?この後、アカタテハやヒメアカタテハがテリ張りにやってきて小ピークは賑やかになってきました。そして16時過ぎ、待望のアカボシ♂がやってきて梢の先でテリを張りました。
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D7K-34、ISO=640、F4-1/3200、-1.3EV、外部ストロボ、撮影時刻:16時03分

 相当遠い場所を表現するため、敢えてノートリミングでのご紹介。暫くすると別の♂個体が飛来してきて華々しい空中戦がスタートです。
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D7K-34(トリミング)、ISO=640、F6.3-1/3200、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:16時15分

 夕刻、山頂にヒルトッピングして来て別個体に空中戦を仕掛ける様子は数年前、香港で初めてアカボシを観察した時の光景と全く同じです。実はこの香港での経験をベースに今回も小ピークを選んで夕刻に限定した探索をしておりましたので、この戦略は一応成功と言えましょう。有難いことに、時間の経過と共にテリ位置は管理人に接近してくれました(^^) 
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D7K-34、ISO=640、F9-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:16時27分

 ようやくじっくりとアカボシ♂を観察できる距離です。奄美大島産亜種の特徴は複数列挙できますが、最大の特徴は後翅赤班の彩度と形状です。この絵のようにストロボを照射した場合、神奈川他で観察できる外来種は赤班が「ピンク色」に表現されてしまいます。実際、ストロボを使わずとも、実物の赤班はややピンク色がかっていて、正確には「アカボシ」ではなくて「モモ?ボシゴマダラ」なのですね。一方、奄美産は鮮やかな真紅。また、赤班は後翅第6室にまで出現しますので、全体の印象が外来種よりも華麗な印象を受けます。本記事の最後に上記特徴比較図を載せましたので、ご覧下さい。テリ位置からライバルを追撃し、戻る途中の飛翔も撮影。
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D7K-34、ISO=640、F9-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:16時31分

 絞り優先モードのままで撮影したので、翅がブレ、かえって動感が出たかもしれません。
次に開翅した場面をほぼ直下より撮影。
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D7K-34、ISO=640、F9-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:16時37分

 生憎、薄雲がかかった夕暮れ時なので、発色はイマイチでした。16時30分を過ぎると、スミナガシとアオバセセリもヒルトッピング組に合流。あちらこちらで異種格闘技がスタートし、このピークは大変賑やかになりました。そのスミナガシを真後ろから撮影。
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D7K-34、ISO=640、F10-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:16時33分

 眼光は流石に鋭いものがあります。なお、本土以外の亜種(奄美産はssp. okinawaensis)を撮影するのはこれが初めてです。さて、ヒルトッピングしているアカボシをもっと近くで、より具体的には、開翅場面を真上から撮影する目的でトラップをある場所に仕掛けておきました。来るか来ないか?ギャンブルでしたが、どうやら大吉と出ました!17時過ぎ、テリ位置から飛び立った♂がフラフラとトラップの近くで旋回飛行を初め、やがてトラップの上に舞い降りたのです!はやる心を押えて狙い通り、ほぼ真上からの撮影ができました。
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D90-85VR、ISO=200、F10-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:17時03分

 このトラップ、実は遠征3日前に調製し、じっくり熟成させて現地に持ち込んだもの。その甲斐あっての成果になりました。この後、側方から回り込み、接近戦で閉翅画像を撮ろうとしたら、無情にも飛び立ち、木立の向こう側に消えました。この後、アカボシは舞い戻らず、ジ・エンド。まぁ、閉翅画像はやや遠目からも撮れたし、大満足でこのピークを後にしました。<更に続く>

≪奄美産亜種と外来種(名義タイプ亜種)の比較図≫
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 本文中に述べた比較図です。右側の比較個体は昨年の秋に撮影した♂。共に夏型です。後翅の違いとは別に前翅の白班出現状況もかなり異なっており、外来種は翅脈に沿って線状に延びるのに対して、奄美産は白点状に留まります。また、ここでは図示できませんが、奄美産は春型と夏型との変異が殆ど無いのに対し、ご存知の通り、外来種の春型は全体が白化して後翅の赤紋も消えてしまいます。
by fanseab | 2011-10-20 21:13 | | Comments(16)
Commented by himeoo27 at 2011-10-20 21:24
最後の比較図を見ると全く違う別種のようですね!
奄美の個体は本当に綺麗で、上品だと思いました。
Commented by fanseab at 2011-10-20 22:20 x
himeooさん、小生もこの比較図を作る過程で、やはりかなり違うな!と改めて実感しました。ただ、嫌と言うほど外来種を観察してきた経験が今回の探索に活きたことは確かです。
奄美産は上品と言うよりは、華麗と言った方がピッタシ来るように個人的には思っております。
Commented by banyan10 at 2011-10-20 23:25
奄美のアカボシ見事ですね。
違いはもちろんあるのでしょうが、やはり元から生息していた場所で撮影したいものです。
下から見上げたテリ張りの様子が雰囲気があっていいですね。
Commented by nomusan at 2011-10-21 05:24 x
う~ん・・・やっぱり良いなぁアカボシゴマダラ・・・。
実はここ数年、撮りに行こうかなぁ・・・と想い続けているのですが、なかなか実現できていません。
もちろん、こんな綺麗な画像が撮れるわけはないのですが、来年は何とか実現させたいと思わせて頂きました。
真下からの画像、”アカボシ”もですが、黄色い口吻も・・・いいなぁ~(笑)。
Commented by kmkurobe at 2011-10-21 11:43 x
ご無沙汰です。モンキアゲハさすが名手の撮影ですね。
こんなのが撮影できたら、小生謎は天高く舞い上がってしまいます。黒い蝶で2頭のからみ・・・・うーん難易度たかいですね。
Commented by yoda-1 at 2011-10-21 12:51
飛翔体はストロボがある分鮮明でいいですね。
この求愛時に雄も雌もよくストローを伸ばしてみますが、何なのだろうと私もよく思います。
異性のフェロモンの受容体は触覚なり、前脚にあるらしいので、吸っている行為ではないように思いますが。
在来アカボシの標本画像が見事に成功して、おめでとうございます。外来種と比較するアカボシ具合の違いもありますが、ここまで前翅の模様も違っていたのかとビックリでありました。
Commented by kenken at 2011-10-21 20:18 x
時系列掲載は、なんともワクワクして拝見できて、えぇもんです。
この斜め上の角度からアカボシ撮れるとは、流石でございます。トラップ技術の秀逸さが伝わってきました。私、めったにトラップは使いませんが、この画像を拝見すると、トラップについても一考せねばと感じました。

ところで、先のヒメシルビア♂の開翅、しびれましたわ。暖かい地方で、まだまだ高温期の名残の個体、翅表周囲の黒い部分の幅広さが最高です。コバルトブルーも「しっとり」表現できて、本年の貴ブログの中でも、屈指の名作であると拝見いたしました。
Commented by naoggio at 2011-10-21 20:29 x
前翅の斑紋も、後翅の赤紋の色や形も、とにかく全然違いますね。こうして並べてみると奄美産は別種のように美しいです。正直ここまで違うという認識はありませんでした。
奄美のアカボシの貴重さが再認識できました。
間違っても外来亜種が奄美に侵入しないように祈りたくなります。
モンキアゲハの飛翔もダイナミックで素晴らしいです。感動です。
Commented by fanseab at 2011-10-21 22:00 x
BANYANさん、今回は天候にも悩まされながら、何とか目的の撮影ができました。外来種には何も責任はなく、放蝶?した人間の責任を問われずべきですが、その外来種を近所で色々と観察したお蔭で撮影のヒントが得られたように思います。タテハはやはり下から覗くようなアングルが一番シックリ来るように思います。
Commented by fanseab at 2011-10-21 22:02 x
nomusan、いいでしょ!奄美のアカボシ。貴殿の所からだとちょっと飛べば奄美ですから、是非来年は。いえいえまだもうちょっと飛んでいそうですから今年でも(笑)。そう、黄色のストローと真紅の紅紋がとても素敵な取り合わせですね。
Commented by fanseab at 2011-10-21 22:06 x
kmkurobeさん、こちらこそご無沙汰しています。モンキはナガサキ同様、相当に個体数が多かったので飛翔を撮るチャンスも沢山ありました。この時の求愛飛翔は相当ゆったりとしていて、ファインダーで覗きながら、マニュアルフォーカスで合焦させながら、シャッターを切る余裕がありました。なので、いつも以上にジャスピンコマが多くて助かりました。また、地上高い所を横方向から撮影しておりまして、背景が綺麗にボケているので、対象がくっきりと浮かび上がる効果も出ました。
Commented by fanseab at 2011-10-21 22:10 x
yoda-1さん、いつもコメント有難うございます。仰る通り、受容体の位置はストローではないですね。そうなると、単なる興奮でストローを延ばしたりするのかな?ある動物も興奮するとある部分を伸ばしたりしますが(笑)
お蔭様で何とかフィールド図鑑用画像しても合格レベルのものが撮影できました。比較画像を作ると頭が整理できて良いですね。
Commented by fanseab at 2011-10-21 22:14 x
kenkenさん、拙い駄文にお付き合い頂いてすみません。トラップは国内種の撮影には本来使いたくは無く、隠し玉ですが、時間の関係で効率を優先しました。100%成功するとは限りませんが、成功した時の快感は忘れられず、つい頼っちゃいますね。
ヒメシルビアの件、シジミ画像撮影の権威である貴殿から過分なコメントを頂いて恐縮です。まぁ、雨上がりの絶妙なコンディションがエエ画像が撮れた要因ですね。そういえば、貴殿と最初にシルビア撮影をご一緒した時も、傘持参でしたね。
Commented by fanseab at 2011-10-21 22:21 x
naoggioさん、比較画像の地色はRAW現像調整時の差であまり真剣に比較してほしくないのですが、赤紋の発現、前翅の白班の発現状況等、こうしてまとめてみることで、自分の頭を良く整理できたと思います。
ご指摘の通り、奄美産亜種は遥か昔、中国大陸から隔離されて独自の進化を遂げた貴重な個体群ですので、人為的交雑は絶対に避けねばなりません。モンキの飛翔は、お蔭様でこれまでに撮影したアゲハ求愛シーンの中では、一番の出来になりました。
Commented by otto-N at 2011-10-22 17:55 x
初めまして。奄美大島のアカボシゴマダラがどうして東京にいるのだろうと思ったのが、チョウ撮影のきっかけでした。
都心で普通になったアカボシは、持っている50年前の図鑑の産のものとは何か違うと思っていましたが、これで納得です。
滅多にみることのできない奄美大島のアカボシゴマダラの貴重な画像ありがとうございました。
Commented by fanseab at 2011-10-22 20:07 x
otto-Nさん、拙ブログへようこそ!
そういうきっかけで蝶撮影をスタートされたのなら、アカボシと不思議な御縁もお持ちのようですね。確かに最近のネットで検索すると、出てくる画像は99%外来種ですし、奄美産はわざわざ遠征して撮影するコストを考えて皆さん遠慮されるのか、殆ど掲載されていないので、両亜種の差異が明確になっていなかったと思います。そんな思いは小生にもあって、比較画像を作成してみました。
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