探蝶逍遥記

奄美大島遠征記(1)10月9日

 3連休の2日目より3泊4日の日程で奄美大島に遠征してきました。主目的はアカボシゴマダラ奄美産亜種(Hestina assimilis shirakii)の撮影。関東で猛烈に生息地拡大を続けている外来種(中国産の名義タイプ亜種)とは別に、是非とも日本領土固有の亜種を観察したいと思っておりました。ご承知の通り、アカボシは多化性のタテハですが、時期的には最終化に近く、どの程度個体数が見られるか?半信半疑での出撃でした。今回は種類毎ではなく、時系列で日記風にご紹介していきたいと思います。

 実は管理人は、過去に沖縄・沖永良部島には観光目的で訪問したことがあるものの、奄美大島は初体験。もちろん、蝶撮影目的で南西諸島に踏み込むのもこれが初体験なのです。
 羽田発10:55で順調に飛行。途中垣間見た富士山の南側はまだ冠雪しておりませんでした。                                                ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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GXR@6.4mm、ISO=100、F8.7-1/640、-0.7EV、撮影時刻:11時30分

 奄美着13:09、東京に比べてやはり蒸し暑さを感じます。早速レンタカーで探索開始。ネット上で調査した過去の観察地点を参考に先ずは小ピークに向かいます。ウスキシロやイシガケが普通に飛ぶ光景はやはり南国です。ヒルトッピングしているアカボシはいないか?暫く注視しますが、坊主。悠々と舞いながら山頂でテリを張っていたのは、ボロのアオスジアゲハでした。
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D7K-34(トリミング)、ISO=400、F7.1-1/4000、-0.7EV、撮影時刻:13時51分

 海に下る傾斜地には物凄い数の蘇鉄が生えていて、ブルー系のシジミは想像した通り、全てクマソ! 別にクマソの撮影にやって来た訳ではないので、これはパス。びっくりしたのは、蝶ではなく、灌木上の蝉の鳴き声。ツクツクボウシとミンミンゼミを足して二で割ったようなメロディを奏でております。姿を探しますが、意外と苦労。やっと見つけたけどこれは♀。
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D7K-34、ISO=400、F10-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:14時09分

 種名はクロイワツクツク(Meimuna kuroiwae)。♂の姿は別のポイントでようやく撮影できました。
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D7K-34、ISO=400、F10-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:15時39分

 2頭蔓んで鳴いておりました。このツクツク、本土産(M.opalifera)と比べると意外と鈍感で、かなり接近しても鳴き止みません。それでも姿を探すのは至難で、この体色が素晴らしい保護色になっているのです。さて、♂を撮影した別の小ピークの尾根筋では、スレ品のリュウキュウアサギマダラが舞っておりました。
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D7K-34、ISO=400、F10-1/1000、-0.7EV、撮影時刻:15時38分

 このマダラが飛ぶと、一瞬アカボシでないかとギクッとしますが、飛び方はやはり別物。自宅近くで外来種の観察を重ねてきた経験で、飛翔の癖からアカボシとリュウアサの区別はつけられます。意外だったのが、アサギマダラの個体数が少なかったこと。何とかリュウアサ撮影後に1頭の♂を撮影。
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D7K-34、ISO=400、F10-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:15時47分

 結局滞在中、アサギマダラの目撃頭数は上記個体含めわずかに2頭。奄美本島のお隣、喜界島にはこの季節、本土から渡ってくるアサギマダラの有名観察ポイントがあるようですが、この個体数の少なさは想定外でした。実は秘かにタイワンアサギマダラ探しをしたかったのですが、当てが外れました。それまで晴れていたお天気も16時を過ぎると怪しげな雲が空に広がり始めました。小ピークでの探索は諦めて今度はアカボシの食樹、クワノハエノキ(Celtis boninensis)の探索です。途中、道路沿いにウスキシロチョウが多数群がっているポイントを偶然発見。ここはどうやら植栽として多数のナンバンサイカチ(ゴールデンシャワー:Cassia fistula)が植えられており、これに彼らが引き寄せられているようでした。早速下車して見ると、どうやらウスキシロとウラナミシロチョウが混飛している様子。暫く観察していると、ウラナミシロ♂が♀に絡みます。しつこく絡む♂に対し、♀の交尾拒否シーンを撮影することができました。
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D90-85VR、ISO=400、F9-1/4000、-1.0EV、撮影時刻:16時09分

 腹端を上げる、シロチョウ♀の交尾拒否態勢は共通しておりますね。さて、クワノハエノキ、簡単に見つかると思ったのが大間違い。意外と苦労しました。ようやくある民家の庭先で発見。これがその葉。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F4.1-1/40、-0.7EV、撮影時刻:16時30分

 和名由来は「桑の葉に似ている」点。しかし葉の形状は殆ど本土産エノキ(C.sinensis)と大差ありません。むしろ印象が違うのは樹肌。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F5.7-1/25、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:16時32分

 高温多湿のためでしょうか、樹肌が地衣類でビッシリ覆われて、エノキ本来の茶褐色の地肌が隠されています。困ったことに、エノキ以外の樹木も大概このように樹肌が地衣類に覆われているので、遠目にクワノハエノキとの区別がつかず苦労します。恐らく冬場にアカボシ越冬幼虫(ここでは樹上越冬が主とされる)を探索する時、かなり苦戦しそうです。なお、この民家でご主人に事情を話して、クワノハエノキについてちょっとお話を伺いました。奄美の方言では、「ボロギ」、「ブブギ」と呼ぶこと、また正月用の餅をエノキの枝に差して飾ることから、「モチザシ」とも言うのだそうです。この後、探索する村々の古老に「モチザシの木はこの近くにありませんか?」と尋ねたことで、食樹探索の効率が上がりました。

 この後、数か所でエノキポイントを発見し、翌日以降の参考にしました。宿泊地に向かう途中、そろそろ睡眠時間の近づいたクロマダラソテツシジミ♂を撮影。
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D90-85VR、ISO=200、F11-1/200、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:16時47分

 この後、小雨が降り出した時点で、この日の活動を終了しました。<次回に続く>
by fanseab | 2011-10-13 22:17 | | Comments(8)
Commented by nomusan at 2011-10-14 06:50 x
おお~っ、奄美でしたかぁ!
私も過去アカボシ狙いで4回くらい行ったことあります。
すでに鹿児島ではなく、しかし沖縄でもない・・・・
”奄美は奄美”って独特の雰囲気があったように記憶しています。

楽しみに拝見させて頂きます~。
Commented by yoda-1 at 2011-10-14 12:28
あの在来アカボシを誰が撮影しにいくのかと思っていましたが、ついに敢行されたとは、素晴らしいです。しかも3泊という念の入れようです。
探索方法も、私の場合は行き当たりばったりになる部分ですが、誠に正攻法というか、勉強になります。
後編が愉しみです。
クロイワツクツクも声もネットにあるみたいで聞いてみます。
Commented by naoggio at 2011-10-14 14:05 x
行かれたんですね、いいな〜。
このあたりのアカボシとはものが違いますものね。
奄美はだいぶ被害を受けていたようですがもう復旧しているのでしょうか?
さてさて次回に向けて胸が高鳴ります。
ウラナミシロチョウの交尾拒否ですか、良い所に出合われましたね。
Commented by fanseab at 2011-10-15 21:31 x
nomusan、4回も訪問されたとは、流石ですね。仰る通り、沖縄や八重山と比較して中途半端なスタンスなので、アカボシでもいなければ皆さん素通りする場所かもしれませんね。でもあまり開発が進んでおらず、とても好印象を持ちました。
Commented by fanseab at 2011-10-15 21:33 x
yoda-1さん、ハイ、何とかチャレンジしてみました。やはり貴重な時間と出費を使うので準備だけは周到に進めました。クロイワツクツク、鳴き声は相当に違うけど、姿形は本土のツクツクボウシそのものなので、逆にビックリしました。鳴き声のメロディに起承転結がない感じで、とにかく「やかましい!」の一言です。
Commented by fanseab at 2011-10-15 21:35 x
naoggioさん、小生にとって初体験の場所でしたので、刺激的でした。後の記事で述べますが、大雨の被害は甚大でした。
ウラナミシロチョウは意外と分布は局所的ですが、ここは個体数が多くて、色々なシーンを撮ることができました。
Commented by kenken at 2011-10-15 22:32 x
むむっ、「本物」のアカボシに挑戦ですねっ!時系列というのが、現地での実感がこもっていて読み応えがあります。う~ん、どうなるんだろう・・・
ところで、探索していて、ハブの心配はないのでしょうか?足元を完全武装しているのかな。
Commented by fanseab at 2011-10-16 00:03 x
kenkenさん、ハイ、「移入種でないアカボシ」を見たい願望は以前より持っておりました。もちろん厳密な意味では名義タイプ亜種は香港で「本物」を観察済ですので、「別物のアカボシ」を見たかったわけです。実は冬場に幼虫を観察する予定がありましたが、成虫を優先しました。
ハブ対策については別途記事中で述べます。
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