探蝶逍遥記

夏型ミカドアゲハの探索@岡山(7/22-23日)

 岡山市内のミカドアゲハ春型については、既に5月の記事でご紹介しました。生憎、♂の出始めで個体数も少なく接近戦での撮影はできませんでした。今回は6月以降に発生が期待される夏型の状況について、再度探索をしてまいりました。

 ミカドは元来多化性のアゲハですけれど、本州で発生する個体は5月中旬頃羽化し、その世代で産まれた卵は遅くとも6月下旬頃には蛹化するのでしょう。この蛹の多くはそのまま夏を過ごし、越冬した後、翌年の5月に羽化します。つまりギフチョウと同レベルの長期間、休眠蛹として過ごすことになります。一方で休眠蛹の一部が何らかの理由で目覚め、6月以降秋口までに発生することがあり、これを夏型と称しています。一般的に夏型の発生個体数は少ないとされていますが、実際に状況を確認すべく、前回同様岡山市内を探索しました。

 最初に訪問したのは、Aポイント。ここはオガタマノキが僅かに1本。早速調べてみると、食痕らしきものを確認できました。ただ時間が経過した食痕のようですね。                                                                             ++横位置画像はクリックで拡大されます++                       
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GXR@5.1mm、ISO=200、F5.1-1/30、-0.7EV、撮影月日・時刻:7月22日、9時48分

 中央下には若葉も確認できますが、卵、若齢幼虫の姿はなし。蛹、蛹殻も発見できませんでした。途中、オガタマノキの樹冠にミカドらしき姿が登場し、ドキッとさせられますが、ゴマダラチョウ夏型でした。春型にも悩まされましたが、本当に紛らわしくて困ります。次に訪問したのが、飛翔撮影に成功したBポイント。ここでは全5株のオガタマノキをチェック。卵、幼虫は確認できず。一部の葉に食痕を確認。かなり時間をかけてチェックするうちに、何と1蛹を発見!先ずは300mmで背面から。
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D7K-34、ISO=500、F10-1/250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:7月22日、13時33分

 続いて真横から85mmで狙います。
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D7K-85VR、ISO=1000、F10-1/250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:7月22日、12時59分

 最後は広角で。
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D7K-1855@18mm、ISO=500、F10-1/200、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:7月22日、13時17分

 こうして、ストロボを照射すると、蛹の姿がはっきりと浮かび上がって見えますが、自然光の条件下では葉裏と蛹の質感がほぼ同じで、葉影に紛れて発見は容易ではありません。撮影後、一旦目線を切ると、その場所を見失うほどでした。なお、蛹の付いていたオガタマノキは樹高約3m。蛹の位置は約1.6m高さ、背面を西に向けておりました。同じGraphium属でお馴染みのアオスジアゲハの蛹も巧妙な擬態を見せます。下記に実例を示します。
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R1@5.5mm、ISO=200、F3.6-1/68、-0.7EV、撮影年月日・時刻:2006年1月29日、13時24分、撮影地:神奈川県川崎市

 この作例は越冬中のもので、残念ながらクスノキの葉が枯れているため蛹が目立ちますが、蛹に彫り込まれた黄色のラインはクスノキの葉脈に似せていて探索時に苦労させられます。この両者を比較すると、その外形の特徴として背中の突起(中胸背面突起)の突出方向が挙げられます。下記画像を参照願います。
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 上記3枚目と5枚目を画像処理して並べた画像です。アオスジでは体軸(クスノキの葉面に接する接線方向)とほぼ直角に突起が伸びているのに対し、ミカドでは体軸に鈍角、つまり蛹の頭部より前方側に突き出しています。しかし、蛹の外形的な特徴以外に、もっと簡単に両者を区別できる識別点があります。それは「葉に静止した蛹の向き」です。4枚目の広角画像をご覧になると明快ですが、蛹の尾端はオガタマノキの葉柄(葉の付け根)側にあります。一方、「アオスジは頭部を葉柄側に向けている」のです。2枚目の画像でわかるように、ミカドの蛹が尾端に向けて窄まる形状とオガタマノキの葉が窄まる傾向が見事に一致しているために、アオスジ以上に巧妙な擬態になっているのです。

 1頭いるからには更に数頭おるに違いない・・・・。そう思って1時間近くこの株と睨めっこしていましたが、他には発見できませんでした。また成虫も坊主。

 さて、昼食後は前回訪問しなかった、C,Dポイントに出向きました。先ずはCポイント。ここにはオガタマノキが合計5株あり、枝振り、葉の付き方はいい感じです。しかし食痕が全くありません。実はこのポイントは数年前にミカドの発生記録がある地点ですが、周囲は住宅街で殆ど森もなく、環境としてはあまり好適とは言えません。次に訪れたDポイントにはオガタマノキ、タイサンボクが各々1本ある場所。背後に森林を抱える好環境。オガタマノキは高さ5mほど。食痕がありましたが、蛹は坊主。若葉から卵、幼虫共に発見できず。タイサンボクには食痕もなし。蛹も坊主。

 この日はこれにて探索終了。翌日は朝から再度Bポイントで探索するも新規知見はなし。その後、E,Fポイントに転戦。ここはオガタマノキ、タイサンボクが共になく、敗退。結局6箇所、合計オガタマノキ12株、タイサンボク1株を検して、1蛹発見が今回の成果でした。新鮮な蛹殻も発見できなかったことから、予想通り、夏型の発生は相当にレアなのだと痛感しました。今回発見した蛹が休眠蛹だとして、来年まで寄生されずに生き残り、無事羽化することを願うものです。

 ところで2日目の探索の途中、とある石組の傍らを通り過ぎると、チラチラと小さな黒系シジミが飛び立ちました。ひょっとしてあの子かな?と思ったら、やはりこの子でした。
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D90-85VR、ISO=500、F10-1/800、-0.7EV、撮影月日・時刻:7月23日、8時36分

 管理人今シーズンの初クロツです。カタバミで吸蜜する♂でしょうか?続いて定番の岩上での開翅。
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D90-85VR、ISO=500、F10-1/500、-0.7EV、撮影月日・時刻:7月23日、9時00分

 後翅肛角の青鱗粉がいつもアクセントになりますね。さて、ここのクロツは何を食っとるんやろか?と探してみると・・・。
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GXR@5.1mm、ISO=200、F9.1-1/45、-0.7EV、撮影月日・時刻:7月23日、8時36分

 ありましたね。ひょっとしてマンネングサ系かと思いきや、定番のツメレンゲでした。卵も見えておりますね。中国地方、特に瀬戸内海側の歴史ある町を散歩していると、思わぬ場所でクロツに出会うことがあります。以前、岡山県内の某有名ポイントで撮影済ですので、管理人としては、岡山県内で二カ所目のラベル?になります。辛気臭い幼虫・蛹探索をしておりますと、ストレスが溜まりますが、想定外の出会いがあると心が安らぐものです。真夏にしては過ごしやすい2日間の探索、何とかミカドの蛹に出会えて胸をなで下ろしたのでした。この後、管理人はこの時期旬のシジミを求めて三重県に転戦です。それは次回ご紹介しましょう。
by fanseab | 2011-07-26 20:49 | | Comments(6)
Commented by chochoensis at 2011-07-27 15:47 x
fanseabさん、「ミカドアゲハ」の=蛹=素敵ですね!!!がぜんファンになってしまいました、昨年、オガタマノキ・タイサンボク・・・しっかりと確認してきたつもりでもフィールドに出たら難しいのでしょうね・・・アオスジとに蛹比較・・・とても、勉強になりました、ありがとうございました。
Commented by fanseab at 2011-07-27 20:41 x
chochoensisさん、コメント有難うございます。
一日半にわたって頭上のオガタマノキとタイサンボクの葉裏をチェックしていたので、首の筋肉が痛くなりました。今度は幼虫もみたいですね。
Commented by ダンダラ at 2011-07-28 21:09 x
fanseabさんならではの緻密な考察と、それを裏付ける素晴らしい写真は読み応えがありますね。
夏型の発生数が少ないのは、やはり食樹の葉の状況が幼虫の生育には適さないからなのでしょうか。
確かにクスノキよりは葉が硬そうですね。
Commented by yoda-1 at 2011-07-29 12:47
>続いて真横から85mm
の画像で、どこに蛹がと少し探しました。
よく擬態していますよね。
蛹形状の比較も素晴らしいです。
YODAの場合、アオスジアゲハの蛹が未撮影なので、なんとも遅れを痛感いたしました。
Commented by fanseab at 2011-07-29 21:18 x
ダンダラさん、ミカドの化数を決定する因子として確かに新芽更新頻度があると思います。仮にオガタマノキが街路樹として沢山植えられていて、剪定により常に「ひこばえ」が発生していれば、夏型が増えるか?の命題ですね。実際問題、本州では、多くのオガタマノキは自生しているのでなくて、神社等の限られた場所で、しかも「ご神木」として剪定もままならない状況ですので、夏型発生には不利でしょう。一方で本州に進出した個体群が本来持っている多化性を消していて、夏型が発生し難い・・・との仮説もあるでしょうね。
Commented by fanseab at 2011-07-29 21:21 x
yoda-1さん、蛹の表面のザラザラ感は葉裏と見事に似せています。一度クスノキの葉裏に付いたアオスジの蛹をご覧になると、擬態の素晴らしさが実感できますよ。蛹の比較ですが、頭部から突起に至る辺に赤褐色の斑点が散布されていることもミカドの特徴かもしれません。
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