探蝶逍遥記

北海道遠征記(3)ウスバキチョウ:その2

 実は今回の北海道遠征で一つ失敗をしております。ウスバキの飛翔撮影条件を事前にシミュレーションした結果、(対角魚眼+テレコン)の組み合わせではなく、18-55mmズームの20mm域付近で狙おうと思っておりました。既に前回記事でご紹介したように、コマクサ平ではロープ規制があって、対象に接近できるチャンスが制限されるため、ウスバキを拡大しやすい焦点域が望ましいと判断したからです。ところが、宿泊先で荷解きをして、上記ズームレンズを自宅に置き忘れてきたことが判明!ガックリです。海外遠征だと、持物チェックリストを作成し、複数回のチェックで所持品の最終確認をするのですけど、ついつい疎かになった訳です。でもこうなったら、対角魚眼と心中するしかありません。覚悟の上でウスバキと対決することになりました。

 広角系レンズでウスバキ飛翔を撮るチャンスは、彼らがロープ規制された登山道に侵入してくる場合に限定されます。相当な飛翔スピードで登山道に突っ込んでくるので、一発必中で仕留めねばなりません。集ったカメラマンの皆さんも連射機能を駆使して苦労されていたようです。最初は何とか置きピン位置に来てくれた♂のショット(以下、全ての飛翔画像は♂です)。                                                     ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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D7K-10.5-X1.4TC(トリミング)、ISO=800、F8-1/4000、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:6月26日、11時27分

 この個体、モンシロチョウを少し大きくした程度で、比較的飛翔スピードが遅いので助かりました。ご覧の通り、登山道には大きな岩が転がっています。登山道に沿って夢中で蝶を追いかけていると、岩に躓くリスクがあります。皆さんから「転ぶなよ~!」と声掛けして頂きながらの撮影でした。お次はハイマツと青空バックの絵。
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D7K-10.5-X1.4TC(トリミング)、ISO=800、F9-1/4000、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:6月26日、11時51分

 ロープが入らないようなカットは結構難しいものがあります。この絵でも、レンズの焦点距離がもう少し長ければ、ウスバキが拡大されて迫力が出たはずでしたが・・・・。3枚目は将に登山道を横切り、ロープの下をくぐり抜けようとする個体。
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D7K-10.5-X1.4TC(トリミング)、ISO=800、F9-1/4000、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:6月26日、11時51分

 背景の雪渓が入り、かつロープが入らない構図はなかなか難しいものがありますね。4枚目は今回の対角魚眼飛翔で一番バランスが取れた構図です。
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D7K-10.5-X1.4TC(トリミング)、ISO=800、F9-1/4000、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:6月26日、11時52分

 地面を低く飛翔するウスバキの生態が一番表現できたと思います。なお、背景の人工物は気象データ観測機器でしょうか?できれば背景に入って欲しくないとこですが、仕方ありませんね。一方、対角魚眼とは別に85mm、300mmでも飛翔を狙いました。殆どの時間帯、彼らは対角魚眼の飛翔の射程には来てくれないので、仕方なく300mmで撮り続けることになります。最初はハイマツ上を探♀飛翔する個体。
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D7K-34(トリミング)、ISO=640、F9-1/4000、-0.7EV、撮影月日・時刻:6月27日、11時13分

 ハイマツに関してはそれこそ舐めるようにジックリ♀を探す行動が観察されます。風を避けて、ハイマツ内に潜り込む♀が多いのでしょう。キリシマミドリの♂がアカガシの枝先を隈なく探すのと全く同じ光景でした。お次はハイマツとイワウメの上を飛翔するシーンを縦位置トリミングで。
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D90-34(トリミング)、ISO=640、F9-1/4000、-0.7EV、撮影月日・時刻:6月26日、13時12分

 ウスバキがイワウメの花を好むことは、前回記事で述べました。登山道からは少し遠い距離に、彼らが殊の外お気に入りのイワウメ群落を見出しました。相当な頻度でこの群落を訪問しておりましたので、群落の中心に置きピンをして、ウスバキ飛来のチャンスを待ちました。そうして何とか得られたショットがこちら。
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D7K-34(ノートリ)、ISO=800、F8-1/4000、-0.7EV、撮影月日・時刻:6月26日、10時07分

 奇跡的にノートリで絵に収まりました。厳密に言うとやや後ピンですが、これ以上、文句は言えません。雰囲気描写には満足しております。ここのポイントは背景の山容が素晴らしいので、85mmでも狙ってみました。
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D90-85VR(ノートリ)、ISO=640、F8-1/4000、-1.0EV、撮影月日・時刻:6月26日、10時28分

 背景はニセイカウシュッペ(1878m)から連なる平山(1771m)、丸山(1617m)に広がる雪渓だと思います。雄大な東大雪の山群をバックに群れ飛ぶウスバキやアサヒヒョウモンの姿は本当に素晴らしいものでした。次回はアサヒヒョウモンの生態をご紹介しましょう。

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<コマクサ平探索メモ>
今後、この時期のウスバキ撮影を予定される方のために管理人が気づいた点をメモします。
(1)コースタイム
①層雲峡~銀泉台: 自家用車で所要35分~40分。4WD車でなくても通行可ですが、大雪湖の分岐からは殆ど砂利道で、下りのコーナリングでタイヤがドリフトしやすいので注意が必要です。
②銀泉台~コマクサ平:上り1時間10分、下り1時間5分。管理人は中高年。夏山登山経験・雪渓スキー経験あり。体力は中程度。歩行時間は雪渓の雪質状態にも左右されますので、目安とお考えください。
(2)装備
①アイゼン:よほどのベテランを除き、夏山用アイゼンは必須と考えます(アイゼンを装着するには登山靴が必要)。管理人は6本爪アイゼンを持参し、重宝しました。滑落防止もさることながら、雪が緩んだ状態でアイゼンなしでは、一歩一歩足を進める時に登山靴がズレ、体力消耗に繋がります。山に登ることが蝶屋の目的ではなく、コマクサ平で駆けずり回る体力を残しておく必要がありますので、登山に消費する体力は最小限に留めたいものです。
②ストック:雪渓歩行でバランスを取るため(特に下りでバランスを崩すことが多い)、持参すべきでしょう。ほぼ全ての登山者が利用していたように思います。管理人は一脚をストック代わりに利用しました。ストック2本は不要で、1本で十分だと思います。
③ショートスパッツ:雪が緩んだ状態で、ズボンの裾と登山靴の隙間から雪が侵入すると気持ち悪いものです。あると便利でしょう。
④防寒着:現地は標高1800mを超える風衝山岳地帯で、風を遮るものが殆どありません。陽が翳り、北風が吹き始めると猛烈に寒いです。管理人は防寒着として薄手のヤッケのみだったのでハイマツの陰に身を寄せて震えておりました。この地の生き字引とも言うべきプロカメラマンの渡辺さんは、厚手のコーデュロイ製ヤッケを着込んでおり、流石だなと感心した次第。
⑤食糧:銀泉台が最後の水場です。飲料水・非常食も含め夏山登山の常識的な範囲での食糧持参が望まれます。
⑥サングラス:雪渓をトラバースする際、あると便利です。紫外線は相当に強く、管理人の低い鼻(笑)もトナカイの鼻の如く、真っ赤になってしまった程です。
by fanseab | 2011-07-04 20:52 | | Comments(6)
Commented by furu at 2011-07-04 21:36 x
柵が写った飛翔写真もこの場所ならではの「リアル」を表していますね。
私も南方指向なので、ウスバキチョウがいなければ一生北海道に行かなかったかも知れません。
私の場合は、防水機能なしのショートカットのハイキングシューズに、アイゼンもストックもなしという、今考えると恐ろしい装備で登りました。次行く時には、上のメモをしっかり参考にさせて頂きます。
Commented by fanseab at 2011-07-04 23:06 x
furuさん、貴殿の本体HPを拝見しました。8年前に行かれたのですね。柵やロープを気にするよりは、何より岩でコケないことが最大の注意点です。骨折でもしたら大変な迷惑をかけることになりますから要注意ですね。雪渓歩行は地元の方はアイゼンなしで、運動靴程度でシャカシャカ登っていくようですが、我々「内地」の人間はそれなりの装備が望ましいと思います。
Commented by himeoo27 at 2011-07-05 07:10
まず素晴らしい写真を拝見した後、注意事項を熟読いたしました。
これから訪問するのに貴重な助言満載でとても役にたちました。
Commented by ヘムレン at 2011-07-05 21:11 x
う~ん・・・「山」の装備ですね~(^^;)。。
でも、行ってみたいです。これ以上体力が衰えないうちに(もう遅い?)、チャレンジしたいものです(^^)。。
素晴らしいショットの連続・・・最後の山バックも雰囲気最高です。
Commented by fanseab at 2011-07-05 22:39 x
himeooさん、北海道は一回ではなかなか撮り尽くせない奥が深い地域です。先ずは大雪山を攻めてみましたが、カラフトルリシジミ含め、固有種は沢山います。是非チャレンジしてみてください。
Commented by fanseab at 2011-07-05 22:42 x
ヘムレンさん、山の装備と言っても、片道1時間ちょいの行程なので、北アルプスでタカネヒカゲを狙うよりはよほど楽だと思います。機材はなるべく軽くしたいですが、天候の急変に備えた準備だけは必要でしょうね。小生も手術後、初めての登山だったので、結構しんどかったです。残雪の背景が綺麗なので、何とか雰囲気を出したい・・・と思って連射に励みました。
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