探蝶逍遥記

下北半島巡り(8月13-14日) (1)カバイロシジミなど

 ブログ仲間の虫林さん が3年前、お盆の時期に下北半島を巡る記事を掲載されていました。暑さでうだる7月、管理人もこの記事を拝見し、涼を求めて北方の旅に出ることを決意し、エアチケットを購入したのでした。目的はカバイロとゴマ。特にカバイロは、北海道と異なり、かなり生息環境が異なるようで、蝶屋のロマンを掻き立てます。

 羽田から三沢空港に飛び、レンタカーを借り、一泊二日で回る結構忙しい日程です。空港近くのコンビニでドリンク類を仕入れて外に出ると、物凄い轟音にビックリ。米軍(もしくは航空自衛隊)のジェット戦闘機の離着陸訓練でした。ここからひたすら下北半島を北に目指します。途中、ゴマを必死に探索しながら、ポイント付近に着いたのはもう16時を回っていました。崖地をウロチョロ数か所巡ると、食草のヒロハノクサフジ群落がみつかりました。ふと崖地を見上げると、猛スピードで飛んでいる見慣れないシジミがいます。スピード感はウラナミシジミそっくりで、そのうち、食草の近くに止まって開翅です。裏面を確認すると、やったー!カバイロの♂でした。                                                                          ++横位置画像はクリックで拡大されます++
f0090680_19351937.jpg
D5K-85VR、ISO=400、F9-1/1000、-0.7EV、撮影月日・時刻:8月13日、16時48分

 記念すべき生涯、初ショットです。ただ、「ホンマ、カバイロかいな?」と読者の方は疑問に思われるかもしれません。それほど判定不可能な超ボロ個体です。「証拠に翅裏と翅表を同時に・・・」と思って回り込んだ瞬間逃げられました。ボロ個体であることが信じられないスピードで崖地を駆け上がって消えていきました。♂がいることがわかったので、このポイントで粘ってみることに。すると、暫くしてゴマを少し小さくしたようなシジミが飛んできました。一目でカバイロ♀だと判定できました。♂に比較するとゆっくりと食草の周辺を飛び、ほどなくヒロハノクサフジで吸蜜を開始しました。
f0090680_19354311.jpg
D5K-85VR、ISO=400、F5.6-1/500、-0.7EV、撮影月日・時刻:8月13日、16時56分
 
 ♀もボロを覚悟していただけに、この時期にしては縁毛もそれなりに残った新鮮な個体に感激です。あまり冒険をしてはいけないと思いつつ、逃げられることを覚悟で縦位置広角にもチャレンジ。
f0090680_1936429.jpg
GX100@5.1mm、ISO=80、F4.1-1/160、-0.7EV、撮影月日・時刻:8月13日、16時56分
 
 何とか崖地の生息地の雰囲気が出せたように思います。そのうち、この個体も緩やかに飛びながら崖地の上の茂みに隠れていきました。どうやら日周活動の終盤で吸蜜した後、ねぐらに帰っていったのかもしれません。日が暮れる前に何とか目的の♂♀がゲットできて、その晩は興奮状態でした。

 現地に泊まってさぁ翌日。「今日は少しは綺麗な♂を撮るぞ~!」と気合を入れて午前6時に出発です。昨日のポイントよりも朝日が早めに差し込む岸壁が狙い。道路脇に駐車しようとすると、既に自家用車が駐まっています。さてはと海岸を覗くと先客がいます。ネットを持っていないようなので、どうやらカメラマンのようです。近づくとあちらから「こんにちは」とご挨拶されます。なんと、驚くことなかれ、その先客とはあの虫林さんだったのです!「お互いなんでまた、こんなとこで再会するのかなぁ~」とあきれて笑顔です。でもこうなると、百人力です。眼力鋭い、虫林さんと一緒に探索開始。しかし、どうもカバイロらしき影がないので、ここは撤収。管理人が昨日撮影したポイントにご案内することに。ただ、ここでもすぐには現れません。潮風に吹かれ、ウミネコの鳴き声を聞きながら、時だけが無駄に過ぎるばかり。そろそろ痺れを切らした頃、「あっ、あそこ!」の虫林さんの叫び声に振り返ると、ブルーの色鮮やかな、超新鮮♂が食草の回りを飛びながらこちらにやってきます。カメラを持って駆け寄ろうとした瞬間、無情にも我々の横を超スピードで駆け抜け、なんと、海の彼方に消えました。しばし呆然の二人でした。結局、この♂は二度と我々の前には姿を現さず、仕方なくここも一旦撤収。虫林さんがご存知だというポイントに案内して頂くことに。ここは食草の数が半端ではなく、大群落が続きます。ただ蝶影は薄く、徒労感が募ります。一瞬、♂らしき個体が視界をよぎりますが、これまたすぐに視界から消えました。そのうち虫林さんが手招きをするので、駆け寄ってみると、かなり草臥れた♀がいました。津軽海峡をバックに縦位置広角で撮ってみました。
f0090680_19363192.jpg
D40-24、ISO=400、F10-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、調光補正1/32、撮影月日・時刻:8月14日、9時49分

 何とか翅裏と表翅を同時に表現してみました。この個体、裏面の黒班の大きさはこの遠征で出会った個体の中では一番大きいものだと思います。背景の空模様でご理解頂ける通り、9時過ぎから雲量が増え、撮影直後からポツリポツリと雨が降り始めましたので、ここを撤収し、ゴマ撮影をした後、また新鮮♂に逃げられたポイントに戻りました。その甲斐あってか、今度は♂が数個体登場してくれました。いずれもボロですが、管理人が初日に出会ったものよりは新鮮です。足場の悪い中、何とか撮影した♂吸蜜画像です。
f0090680_19365993.jpg
D90-34、ISO=500、F10-1/160、-1.0EV、撮影月日・時刻:8月14日、11時24分
 
 後翅裏面基部に広がるブルーの鱗粉はオオルリシジミを彷彿とさせます。残念ながら♂の開翅は手ブレで失敗。「もうちょっと綺麗な個体で撮るからいいや」と負け惜しみを一言。そのうち、ゆっくりと飛ぶ♀も登場。角度は悪いけど、なんとか産卵シーンをゲット!
f0090680_19372140.jpg
D90-34、ISO=500、F10-1/160、-1.0EV、撮影月日・時刻:8月14日、11時30分

右前翅が若干羽化不全の状態から判断して昨日撮影したのと同一個体のようです。産卵が終わると開翅休息。
f0090680_193736100.jpg
D90-34、ISO=500、F10-1/160、-1.0EV、撮影月日・時刻:8月14日、11時30分

 ♀については、比較的新鮮な個体に出会え、広角、吸蜜、開翅、産卵と望外の成果を得ることができました。反面、♂は現実的には時期が遅すぎたようで、7月上・中旬頃訪問しなければならないようです。

 さて、今回現地での目的の一つにオオモンシロチョウの撮影がありました。カバイロのポイントでもモンシロとオオモンシロが混棲していますが、オオモンシロの飛翔力は際立っていて、一目でモンシロと区別できるものでした。その♀の吸蜜シーンをご紹介しましょう。
f0090680_1938153.jpg
D90-34、ISO=400、F10-1/640、-1.0EV、撮影月日・時刻:8月14日、8時12分
f0090680_19381266.jpg
D90-34、ISO=500、F10-1/800、-1.0EV、撮影月日・時刻:8月14日、8時12分

 前翅先端がかなり鋭角的であること、そしてその素早い飛翔力から、管理人は東南アジアのシロチョウ、Appias(トガリシロチョウ属)を思い浮かべたのでした。ここには、またヒメシロチョウも飛んでいます。波打ち際を緩やかに飛ぶヒメシロを見ていると、いかにも北国にきたなぁ!との実感が湧いてくるものです。ママコノシリヌグイからの♂吸蜜シーン。
f0090680_1938268.jpg
D5K-85VR、ISO=200、F8-1/1000、-0.3EV、撮影月日・時刻:8月14日、8時03分

 なお、今回の遠征にあたり、事前にブログ仲間、「青森の蝶達」の Celastrinaさんからはこの時期の下北の蝶相について、詳細な情報提供を頂きました。この場を借りまして厚く御礼申し上げます。また、現地で偶然再会し、撮影をご一緒した虫林さん、大変お世話になりました。次回はゴマシジミ探索について、レポートいたしましょう。<続く>
by fanseab | 2010-08-15 19:41 | | Comments(14)
Commented by yoda-1 at 2010-08-15 20:39
カバイロシジミ初撮影、おめでとうございます。
この後翅裏基部の青さはいいですね。
YODAも自宅周辺の蝶をまずまず撮り終えた暁には、
遇ってみたい蝶になりました。
オオモンシロは確かに別人ですね。
これは南下してこないのでしょうか。
Commented by ダンダラ at 2010-08-15 23:03 x
カバイロシジミ撮影おめでとうございます。
なんと虫林さんは、このお盆休みにはそちらに出撃されていたのですか。
時期的に難しかったようですが、日本海背景の写真は良いですね。
Commented by 虫林 at 2010-08-16 09:33 x
ご苦労様でした。
下北半島のあの場所で出会えるなんて、本当に奇遇と思いました。カバイロは時期的にはかなり盛期を過ぎていましたが、そんな中で素晴らしい写真をものにされていますね。良かったです。
また、どこかでご一緒できれば幸いです。
明るい青ゴマの写真も楽しみにしています。
Commented by banyan10 at 2010-08-16 17:39
下北の遠征はすごいですね。僕だと何かの用事がなければ北海道へ行ってしまいそうですが、機会があれば訪れたい場所でもあります。
そんなところで虫林さんと遭遇するというのはすご過ぎます。(^^;
雌は新鮮な個体も残っていて良かったですね。擦れた雄も海を背景にした広角は傑作です。
Commented by chochoensis at 2010-08-16 17:45 x
fanseabさん、下北の「カバイロ」・・・撮影おめでとうございます。憧れていますが、小生にはもう気力が足りません・・・素晴らしいです。良かったですね・・・。
Commented by fanseab at 2010-08-16 20:23 x
yoda-1さん、有難うございます。
北海道の蝶はまだ殆ど未撮影種でして、カバイロはもちろんです。このシジミだけなら、無理に下北で頑張らないで、北海道で撮影する手もありますが、食草の関係で、むしろ下北の方がポイントが限定される関係上、ポイント探索が楽かもしれません。ただ、時期はやはり遅かったですね。現在の温暖化傾向は、北方系の蝶の南下を阻む要因ですから、オオモンシロが東京近辺に拡散する可能性は少ないと思います。
Commented by fanseab at 2010-08-16 20:26 x
ダンダラさん、現地で虫林さんに出会った時は、本当にビックリしました。下北のカバイロでは、海バックの画像を撮影することが夢でしたが、吸蜜時に結構クルクル動き回って、カバイロの裏面を海と平行に保つ絵がなかなか撮れないのです。やはりピカピカの♂がブルーに輝いて、背景が海・・・といった絵を撮りたいですね。
Commented by fanseab at 2010-08-16 20:30 x
虫林さん、そちらこそお疲れ様でした。
それにしても、お互いビックリでしたねぇ!あれだけ速く飛翔するカバイロなんで、虫林さんと二人で蝶の飛翔軌道を分担探索したお蔭で、♂もそれなりの絵が撮れたと思っています。あの足場の悪い中で一人での探索とは効率が全く違ってきますからね。
また、どこかで撮影ご一緒いたしましょう!
Commented by fanseab at 2010-08-16 20:34 x
BANYANさん、北海道はいずれ訪問するチャンスがあると思いますが、下北は滅多に行く気になれない場所でもあります。虫林さんのブログ記事にとてもロマンを感じたので、思い切って遠征しました。♀が撮れた時、正直、「これでエアチケット代が無駄にならなかった」と思いましたよ(笑)蝶の撮影以外にも海岸線がとても綺麗で楽しめる所だと思いました。
Commented by fanseab at 2010-08-16 20:38 x
chochoensisさん、下北半島は、昔地理を習った時から、マサカリ型の姿にとても興味がありました。まさか、蝶撮影で下北を訪れるとは思ってもいませんでした。初日は台風一過で津軽海峡ごしに対岸の渡島半島も望める風光明媚な場所でした。カバイロも何とか撮影できてとてもラッキーだったと思います。
Commented by maeda at 2010-08-16 21:12 x
不思議なことに道南でもカバイロの発生はだらだらで、お盆の頃に成虫(ボロから完品まで)、幼虫、卵と見ることが出来ます。蛹も本当はあるはずですが見つけられません。
道東のカバイロではこんな現象はありませんね。
Commented by fanseab at 2010-08-17 09:48 x
maedaさん、なるほど道南でも同じダラダラ発生なんですか?津軽海峡から持ち込まれる暖流で発生する霧の影響でもあるんでしょうか?もちろんダラダラ発生の恩恵で、小生も結構綺麗な♀を撮影できたことになります。食草の花弁を100近く検したんですが、幼虫は発見できませんでした。ちょっと残念でした。
Commented by clossiana at 2010-08-19 07:57
下北半島までの大遠征お疲れ様でした。でも、その甲斐があったみたいですね。この蝶は清楚なイメージですが、そこにクサフジの花が添えられると見事に開花するって感じです。海を背景にした写真も雰囲気があって素敵です。
Commented by fanseab at 2010-08-19 23:17 x
clossianaさん、確かに今回は大遠征でした。蝶観察でもしていなければ、下北にわざわざ足を運ぶこともなかったと思います。それなりの出費をした遠征でしたので、目的の種がゲットできて、ホッとしましたよ。カバイロに小生が当初抱いていたイメージも「清楚」でしたが、実際に会ってみると、とても敏速でヤクルリに通じたスピード感を味わいました。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード