探蝶逍遥記

日本蝶類学会大会(12月12日)

 管理人が所属する首題大会に初めて出席してきました。場所は東大理学部。東大構内に入るのは久しぶり。古色蒼然とした建物が配された緑豊かな環境は素晴らしいですね。この学会、実はある事情で2派に分かれた不幸な歴史を背負っていて、わざわざ「日本蝶類学会(テングアゲハ)」との呼称がついています。そんな歴史はともかく、今回は充実した講演内容で、楽しめました。

 今回講演で一番期待していたのが、Vietnam-Russia Tropical CenterのDr.Monastyrskii氏の「Butterfly fauna of Vietnam:Modern diversity and origin」でした。同氏の著作、「Butterflies of Vietnam」は管理人も愛読していて、Volume1のヒカゲチョウ編ではMycalesis属の乾季型図版が数多く掲載され、重宝しています。東南アジアの蝶が新生代以降、現在までどのような過程を経て形成されてきたか?ベトナムを切り口に、上手く整理されていたと思います。南北に長いインドシナ半島の東端には細長い山脈がある訳ですが、この山塊で蝶の分布が途切れることはもちろん、海岸線沿いでの高原が邪魔して、水平拡散も妨げている・・・、ここら辺の考え方は新鮮で、興味深いものでした。

 一般講演では、九大・矢田教授(当学会の会長でもある)の「Appias属の諸問題」がムチャクチャ面白かったですね。Appias属(トガリシロチョウの仲間)の系統関係と種分布の関係が見事に整理されていて、流石シロチョウ研究の権威と言われるだけのことはあるものでした。スラウェシに棲むzarindaaurosaの対比・・・等を聞いていると、またぞろ、スラウェシに行ってみたくなるのでした。一方、癌細胞を自殺に追い込むタンパク質(ピエリシン)の話題が講演時間の関係で詳しく聞けなかったのは残念でした。しかし、近い将来、「トガリシロチョウという蝶々が癌患者に福音」なんて話題が巷に流れて、一部の蝶屋にしか馴染のない「トガリシロチョウ」が有名になるかもしれませんね。

 さて、講演終了後は、場所を移しての懇親会。年齢・職業に関係なく、「蝶気狂い」同士でお酒を飲みながらの会話は楽しいものです。著名なプロの写真家や同学会の編集部の方々とも、楽しくお話させて頂きました。また、冒頭にご紹介したM教授からは北ベトナムの撮影ポイントについて直接ご教示を頂き、助かりました。教授に「Butterflies of Vietnam」の今後の刊行計画をお聞きすると、「Vol5までは出すことになると思う。でも私の仕事のペースは遅いから、あまり期待しないでください、ハハハ・・・」 
と冗談交じりに答えてくれました。懇親会の後半は恒例となっているオークション。管理人も実物をまだ拝んだことのないような、世界の珍品標本が100均で買えるようなタッパーウエア容器に入って展示されているのにも二度ビックリ。盛会のうちに懇親会も終了しました。また来年の大会が楽しみです。

 画像がないのも寂しいので、南ベトナム・カットティエン国立公園で撮影した画像を3枚張っておきましょう。最初はスコールが終わって西日が射し始めた頃、林縁でテリを張る、モリノオナガシジミ(Cheritra fleja evansi)の♂。                 ++横位置画像はクリックで拡大されます++  
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D70S-VR84@400mm、ISO=640, F6.3-1/320、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影年月日・時刻:2007年4月30日、14時29分

 長大な尾をなびかせて舞う姿は独特な眺めです。お次はシロスジマダラ(Euploea caramalzeman caramalzeman)♂の飛翔。
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D70(トリミング)、ISO=640, F4-1/2000、+0.3EV、撮影年月日・時刻:2007年5月1日、10時58分

 この公園で夥しい集団を見ることができました。3枚目は陽射しの強い林道上で隊列を作って飛翔するタイワンシロチョウ(Appias albina darada)の♀。
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D70(トリミング)、ISO=640, F4-1/2000、+0.3EV、撮影年月日・時刻:2007年5月2日、11時59分

 間歇的に続く、シロチョウやオナガタイマイの隊列飛翔は興味深いものでした。
by fanseab | 2009-12-14 00:06 | | Comments(2)
Commented by maeda at 2009-12-15 05:54 x
トガリシロの話は面白いです。でもなかなか難しくて、試験管内では効果を発揮できても生体内ではまったくダメな物質が多いです。
上手く働いてくれると良いですが。
Commented by fanseab at 2009-12-15 07:14 x
maedaさん、ピエリシンの有無が分類の助けになる発想が面白いです。詳しく調べてみたら、Appiasから抽出したピエリシンとモンシロから抽出したものとは異性体の関係にあって、Appiasのみ生体内でも活性を示したりしたら面白いと思います。そもそも食草が両者で異なるのですから、大いに有り得る話かなと勝手に想像しています。
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